第11話 もうひとりの転生徒
矢の来た上方、
食堂のオネーさん――。
え、
「ノンノン、フーカちゃんと呼びなさい、フーカちゃんと」
耳もとまで覆うほっかむりに、調理用スモック着。
背中に弓矢を背負っているが、間違いなく食堂のオネーさん、
「どうして、
俺の問いかけに、ウインクひとつ。
「おっ、陰キャ少年!
「て、テメー、あーしを知ってんのか?」
「そりゃ知ってるさー。こちとら学園
いつのまにか歩みを進めていた
少女の股間スレスレに突き立った矢をサクっと引き抜いて、またもウインクひとつ。
「ホントのとこ、去年君の入学が決まったときには、かーなり期待してたんだよ。小中学時代、武道競技タイトルを総なめにし神童と
「チッ、ウルセーんだよ」
「ハーイ、でもいま判明しました。ヤンキーなんてのは大嘘だね。というかまあそもそも、そんなのわかっていたからこそうちの学園は君を転生徒テスト生として入学させたんだけど、ニャッハハー。そうとも、
「コホン……、フッ、な、なーんだ、やっぱりそーなのかー」
ばつの悪そうな
こころなしか、左手はまだモジモジとスカートの
「アッハハ。ボ、ボクの聖剣に挑みかかる気迫といい、あれだけ
「おーおーユーシヤちゃんも、いいカンしてるじゃん」
ユーシヤとはすでに知り合いなのだろうか、親しげに軽くウインクだけ返すと、
「まったく、このフーカちゃんの矢をあそこまでかわしきれたのだって、拍手
手にした矢をヒラヒラさせて立ちあがりながら、
「でもさー、グレることないじゃんか。おそらく、そのアマゾネス属性特有の赤髪やタトゥーのせいでまわりからヤンキーあつかいされ続け傷つくくらいなら、いっそヤンキーにでもヤンギャルにでもなっちまえ、その方が楽だって考えたのかな? うん、そりゃ失敗だ。少なくとも、こんな風に路上で
「……ルセーんだよ」
「はいハーイ?」
「さっきからウルセーッつってんだよ!」
尻もちのまましばらく黙っていた赤髪ヤンギャルが、牙をむいて怒鳴った。
「そーだよっ、あーしは
そのさけびは
「しゃーねーじゃねえか! ヤンキーヤンキーって指差されんなら、ヤンキーとして生きていくしかねーだろうがっ。もう全部捨てたんだ、あきらめたんだ。大好きだった道場も、勝ち取った賞もトロフィーも、必死で
「わかるよ。君も私も、戦士だから」
――それまでとはまるで別人のように静かな、冷たさもやさしさも
「もう一度言う。
まだ小さく抵抗の意思を残してのけぞろうとする赤髪頭に、ポカンと手刀を叩き込んで。
「強くなりたいんなら、自分を
乾いた橋の木板に、ボタっと涙の落ちる音がした。
肩を震わせる
「……や……だ。このまっ、まじゃ……いやだ。……あ……あっ……あーしは…………やっぱり……」
「――強くなりたい」
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