第3話 亡者の食卓
「――と、いうのがお兄ちゃんの新学期初日でした。ほれ、わが妹よ、お前の分のオムレツが焼けたぞよ」
「ほほう、それは
俺がフライパンから熱々の納豆オムレツを皿に移し食卓へ出すと、妹の
短いツインテールをフリフリし、ナイフとフォークを手にダダをこねてもギリギリ許されるお年ごろの中1女子である。
しかし兄たる俺、
「わがまま言わずに食べなさい、いやし。納豆は体にいいんだぞ」
「お兄ちゃんが納豆食べたいだけじゃん。当番の日はいっつもこれなんだから」
母子家庭なうえに母親が会社勤めですこぶる帰りの遅い我が毛治谷家では、夕食の支度は兄と妹の当番制。
いやしは小さなころから料理好きだが、できれば楽をさせてやりたいので、割合としては8:2くらいで俺が腕を振るうことが多い。
まあたしかに、このところ納豆オムレツの登場回数は多いかもしれん。
白骨化した長髪、腐った白目に、骨とただれた皮ばかりの呪われた体。
そんな亡者属性の転生徒になってからというもの、なぜか俺はむしょうにこの腐ったお豆さん――もとい美味しい発酵食品である納豆が大好物になってしまった。
腐ったものどうし、ある種の親近感をおぼえている気すらする。
だがきっかけが何であれ、可愛い妹の健康を願う兄の気持ちに変わりはないのだ。
いまこのささやかな賃貸マンションのダイニングにたちこめる香りには、バターと卵と納豆と、そして兄の愛が含まれているのだ、妹よ。
「納豆オムレツは健康効果もバツグンなんだぞよ。ネット情報によれば、免疫力アップや疲労回復はもちろんのこと、便秘解消や美肌効果もアリ」
「び……美肌効果‼ ううむ、それはアッパレであるな……モグモグ」
聞きわけのいい、すなおな自慢の妹である。
いやしは身内に俺がいるせいか、転生徒への偏見を持っていない。
俺が高校進学初日に出会った
納豆オムレツをきれいにたいらげ、グラスの水をゴキュッと飲みほすや、妹はニッコリ笑った。
「フゥ、ごちそうさまでしたぞよ。……聖剣使いの勇者属性な
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