第6話 玉たまカーニバル
「良いか? 今からお前のち◯こを一個ずつ斬り落とす」
「一個しかないけど!?!?!?」
──どうしてこうなった!!!!
「安心しろ。玉は二つあって竿は一つ。計三回斬れる」
「安心する要素どこにもねぇわッ!」
──こうなった経緯は、過去に遡る必要がある。
☆☆☆
無事に(?)王に【聖騎士】だと認められてから二日が経過した。
……いや、まあ【性騎士】なんだけど(もうこれ言うの飽きた)。
王都にて手配された宿は超高級店で、陰気臭い村暮らしだった俺はとにかく落ち着かなかった。
部屋にある物を何壊しても人生が終わる。
おちおちリラックスして眠ることなんて無理である。
「あれから音沙汰ないし、宿から出ることは禁止されてるし一体俺は何をすれば良いんだよマジで」
死ねと言われて死ぬより、何も言われずに殺される方が嫌なのと同じように、何の情報もないまま放置されるのは些か精神的苦痛がある。
美人の面拝めてないし、こんな高級な場所で溢れ出る情欲に身を任せることもできない。ナニとは言わないけど。
ぐおおお、と内心モヤモヤしていると、コンコンと扉を叩く音が聴こえた。
「アルス様。王よりお呼び出しがあり、お迎えに上がりました」
聴こえてきたのは女性の声。どうやらようやくお役目とやらを聞ける時が来たらしい。
よっこいしょ、と重い腰を上げて扉に向かう。
うーむ、メイの声ではないけども……まあ、たかが呼び出しで貴重な【黒騎士】を派遣する理由はねぇか。
少々残念な気持ちを抱えながら扉を開ける。
すると、そこにいたのは青髪蒼眼のこれまた美人の女性だった。
特徴的なのは顔以外を覆う純白の鎧。メイに勝るとも劣るとも言えない強者としてのオーラを感じた。
ただ……どうも貼り付けたような薄気味悪い笑顔を浮かべているのが気になる。
超絶美人なだけに違和感がある。多分俺以外は気が付かねぇんじゃねぇか、ってくらいの違和感だけど、師匠にも唯一褒められた俺の洞察力がそう告げている。
ま、美人だからどうでも良いか!
「あー、どうも?」
「…………さ、表に馬車を用意しております。どうぞ」
「王城で説明を受ける感じ?」
「…………」
無視かよ!!
話が通じないような気がする。会話が一方通行というか、必要最低限以外話す気がなさそうな。
勿論この女性とは話したことも見たこともないし、俺が何かやらかしたわけでもない。
当然恨みを持たれる理由はない……いや、一応あるか。
順当に考えてこの女性の職業は『騎士』系統の職業だと思われる。
大凡"当たり"と呼ばれている職業であり、彼、彼女らは【騎士】の職業に誇りを持つという。
要はプライドが結構高ぇってことだな。
だからこそ、自らの地位が脅かされる【聖騎士】という完全上位互換職業が現れたことによる焦りは計り知れない。
確かに勇者一行にいた職業だとしても、誰彼構わず【聖騎士】を信仰しているかと言われると、それは当然違う。
ましてやこの女性が【騎士】の中でも上位に値する職業だとすれば……良い印象を持たれていない理由としては順当だろうな。
俺だって一応【騎士】系統の職業なんだけどな。
誇りとか一瞬で消し飛ぶ文字が騎士の前に付いてるだけで。
どうも、性なる騎士です。
そんなふざけた事故紹介を心の中で繰り広げながら、ひたすら馬車に揺られる。
態度が良くなったメイとは違って、話す気がありませぇん! と言わんばかりに貼り付けた笑みで黙る女性と二人きりの空間は辛いオブ辛い。
俺が何をしたってんだ!! 職業騙ったよ!
重罪じゃねぇか。
「……ん? あれ? 王城への道じゃなくない?」
「…………」
「おいおいおい、なんか薄暗い道突入してんじゃん!! どゆこと!? 降ろして!! ここどこ!」
「落ち着いてこちらをお飲みください」
……女性がカップに何らかの粉末を入れて、俺に差し出してきた。
「なんか入れてんじゃん!!!」
「……チッ、大人しく飲めよ」
「目の前で異物混入してそのセリフは頭イってると思う」
「……仕方ないか」
一連の動作にツッコミどころしか無い件は一先ず置いておいて、目の前の女性が俺に敵意と害意を持っていることは分かった。
分かった、っつーか雑すぎるだろどう考えても。
……何が目的だ?
激しくツッコミをしつつ、頭の片隅には冷静な思考が浮かんでいた。
俺が【聖騎士】ってことはバレてると思う。
バレた先は……? 恐らく王城の中でも地位の高い者には共有されてると思うし……女性からはどこか騎士っぽい誇り的なのも感じる。
悪党ではないと思う。……いや、思いっきりやろうとしてること悪だけどもよ。
だとすればやっぱり【聖騎士】に恨みを持つ騎士の者による犯行の可能性が高い。
……そうと分かれば逃げ──!!
馬車の扉をぶち破って逃げようとしたその瞬間、フッと目の前から女性の姿が揺らめくように消え──頭に衝撃が走り、呆気なく意識が消失した。
☆☆☆
──んで。
「良いか? 今からお前のち◯こを一個ずつ斬り落とす」
「一個しかないけど!?!?!?」
「安心しろ。玉は二つあって竿は一つ。計三回斬れる」
「安心する要素どこにもねぇわッ!」
──こうなった。
いや何でだよ!!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます