第4話
「なるほどね」
わたしの話を聞いた田中さんはそう呟く。
「これは人生の先輩からのアドバイスなんだが」
人生の先輩って、田中さん私と同じくらいに見えるんだけど。
「電脳王たるボクはすでに53歳だよ。結城君よりずっとお姉さんなんだよ」
妙にリアルな数字なのが気になる。
というかなんかさっきまでのクールなイメージがちょっと変わったな。
「うるさいな」
田中さんはこほんと一息置いて再び話し始める。
「確かにボクたちは世間から見たら変わった存在なのかもしれない。でも彼らはボクたちの人生に口出しする権利を持たないし、ボクらも彼らの話を聞く義務はない。言いたい人には言わせておけばいい。ただ、これだけは忘れちゃダメだ。自分を誤魔化してまで、自分を傷つけてまで周りに合わせようとしないことだ」
・・・
心の深いところに刺さったような気がする。
その時、扉が開いて、神崎さんが入ってきた。
「だだいま帰還したわ!」
「おかえり。何を買ってきたんだい?」
田中さんにそう問われた神崎さんは不敵な笑みを浮かべながら何かの飲み物を取り出した。
「『地獄の業火に焼かれよ!獄炎レッドドラゴンジュース』よ!」
・・・なに、そのネタ感丸出しの名前の飲み物は。
というか飲み物なのかな、あれは。
だって赤黒い飲み物なんて絶対人が飲んでいい色じゃないよ!
「燈火。まさかそれを結城君にあげるつもりなのかい?」
「そのために買ってきたんじゃない!って!なに?その表情?」
いやだって。
その時、神崎さんがおもむろにペットボトルをあけた。
プシュッという音がする。
え、あれって炭酸飲料なの?
さらに神崎さんは液体をコップに移して一気に飲み干した。
「これよ。この刺激がいいのよね!」
うそでしょ。
「ほら」
そういって神崎さんはわたしの分もコップに注いで手渡す。
え、これを飲むの?
助けを求めて田中さんの方を向く。
しかし田中さんはそっぽ向いていて、画面には「頑張れ」という文字が映っている。
ちょっと!お姉さん!
助けはなし。目の前には期待した目をした神崎さん。
うう、こうなったらどうにでもなれ!
コップの液体を一気にのどに流し込む。
「どう?」
神崎さんがそう聞いてくる。
「か、」
「か?」
「からあああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!」
やばい!辛い!のどが焼ける!はじける!痛い!
体中から汗が噴き出る。
あまりの刺激に意識が薄れその場に倒れこむ。
やばい。死ぬ。
「ちょ!大丈夫⁉」
「あ、あ、あ、、ああ、、、、」
そのままもだえ苦しみながらわたしは意識を失った。
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