第3話

 気絶した子が目を覚ますのを離れたところから見守ったわたしは、隣にいる神崎さんの方を向いた。

「で、さっきのはどう言うこと?」

「言葉のままよ。あなたは私と同じってこと。やはり私の魔力に間違いはなかったようね」

「勝手なこと言わないで!」

 自分の口から信じられないくらいに大きな声が出た。

 突然のことに神崎さんは驚いている。

「ご、ごめん。急に、大きな声を出して」

「いや、急に私と同じ世界をみているとつげたとて混乱するのも無理はないわね。私の方こそ申し訳ないわね」

 なんか違うような。

 けれども神崎さんは「そうねー」と考えたあと顔を上げた。

「そうだ!あなたこのあと時間ある?」

 え?時間?

 いきなりどうしたんだろう?

「ま、まあ、あるにはあるけど」

 わたしの返事に神崎さんは「よかった!」と手を叩いた。

「じゃあ私のこの世界での活動拠点にこない?」

 私のこの世界での活動拠点?・・・神崎さんの家ってことかな?

「ちょうどここから近いのよ!」

 で、でも。

「遠慮しないで!詳しい説明はそこでするから!」

 そう言って神崎さんは私の手を引っ張った。

 ああ!もう!

 結局わたしは神崎さんについていくことになった。

「ここよ!さあいらっしゃい!」

 そういって神崎さんに通されたのはさっきのところから数分歩いたところにあるマンションの一室。

「おじゃましまーす」

 恐る恐る部屋の中に入る。

 部屋はそれなりの大きさがある。だけど。

「一人暮らしなの?」

「そう。両親は私の次元についていけないようでね」

 聞かない方がよかったかな。

 常に元気な神崎さんがそのときだけちょっぴり寂しそうな顔をしたのは見間違いだったのかな。

 すぐにいつもの調子を取り戻した神崎さんは「それよりも!」と話し始めた。

「こっちきて!」

 そういって案内されたのはあちこちに魔法陣やよくわからない器具や本が乱立している部屋。

 そんな非現実的な部屋の奥には場違いにしか見えないに大きなモニターがある。

「神崎さん、ここは・・・」

「電脳王!起きてるーー?」

 電脳王?誰かのことみたいだけど・・・誰もいないな。

 そのとき、モニターが明るく光った。

 な、なに⁉

 モニターに黒い人影が映る。

「やあ獄炎の支配者。久しぶりだね。おや?一体その子は?」

「私のクラスメイト、結城沙羅よ!私の魔法が見える子よ!」

 神崎さんがそう言うとモニターの奥から「ほう」というつぶやきが聞こえる。

「これはボクも名乗らないといけないね。ボクは田中花子、電脳王だ。よろしくね、結城君」

 その言葉とともにモニターに長い水色の髪をした白衣の女の子が映し出された。

「は、はじめまして、結城沙羅です。よろしくお願いします」

「さっそくだけど漆黒の闇騎士団などについて説明をお願いできないかしら?」

 神崎さんの頼みに田中さんは「まったく」ととため息をした。

「いつも唐突なんだから。まあそれも燈火らしさか」

 そういって田中さんは話し始めた。

「漆黒の闇騎士団、その正体はいまだ謎が多く、宇宙人であるという話や異世界からの侵略者であるという説など様々な説がある。ただ確実なのは奴らは人間の存在の力を糧としているということ。奴に食われた人間は存在そのものが消滅し、この世界に初めからいなかったことになる」

 え⁉

 そんな存在がいるわけ・・・

 でも実際にあんな状況を見た以上受け入れざるを得ない。

「奴らに対抗するためにボクたちは想像の力を糧に戦っているのさ」

 想像の力?

「そう。そうだ燈火!ちょっと結城君に飲み物でも持ってきてあげなよ」

 ?急に何だろう。

 しかし神崎さんは「それもそうね」と部屋から出ていった。

 すこしして玄関が閉まる音がする。

「さて、話に戻ろうか」

「あの、どうして神崎さんを外へ?」

 わたしの質問に田中さんは微笑む。

「彼女は純粋だからね」

 ?どういうことだろう?

「さっき言った想像の力というのはもともと誰もが持っているものなんだ。だけど多くの人はボクたちのように戦うことはできない。彼らとボクらの違いは何だと思う?」

 うーんなんだろう?

「中二病って言葉を聞いたことはないかい?」

 あ!たしかに!

 ということはもしかして⁉

「そう、自分の想像力で世界を違う姿でとらえる中二病と呼ばれる者たちが漆黒の闇騎士団を打ち倒すことができるんだ」

 なるほど。

「で、でもわたしは・・・」

「ふむ。それなんだが、気を悪くしたら申し訳ないが結城君、君にも何か思い当たる節があるんじゃないか?」

 ⁉

「どうしてそれを⁉」

 田中さんは自信ありげな表情をする。

「ボクは電脳王だからね。それくらいあっという間に調べられるさ」

 この人は敵に回したら絶対ダメな人だ。

「よければ話してくれないかい?燈火はたぶん家に人に出せるような飲み物がなくて買い物に行っているだろうからしばらく戻らないと思うよ」

 でも・・・・・・・はぁ。

 どうせさっきの感じだと全部ばれているんだろうな。

 あきらめてわたしは静かに口を開いた。

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