第4話

ピピピ…ピピピ…

アラームの音で微睡から強制的に現実に戻される。

外を見ると今日も晴天のようで既に太陽が顔をのぞかせている。


みはるさんとの同伴の日はいつも晴れているから今日も大丈夫だろうと思っていたが、そのなんの根拠のない思いは今日も当たったようだ。


時計を見ながら約束は18時からなのであと10時間程度ある。

それまでに溜まった家事をし、美容室の予約に合わせて行動しないといけない。

のんびりしている時間はないな、そう思い洗面所に向かう前にみはるさんに連絡をしておく。


〈おはよ!まだ寝てるよね、ごめんね。

今日もお天気で良かったよ、みはるさんは晴れ女かもしれないね!

お店のまで待ち合わせで大丈夫だよね。

久しぶりに会えるのを楽しみにしてるね。〉


返信はないってわかっているが、浮かれている自分を抑えるためにもこの文面は必要だと思うんだ。





「のぞむさん、カット終わりましたよ。このままセットしていきますか?」


「ええ。この後お出かけするので、お願いします。」


「了解、じゃあこんな感じでいいかな。いつもありがとうね。」


無事に1日のタスクも終わり、美容室で散髪とセットをしてもらい店を後にする。


ここから電車に乗って30分でお店には着くのでのんびりと駅までは歩いて向かう。

正直毎回お店に遊びにいく時はこの時間が一番好きだったりする。


みはるさんは今日はどんな服で待ち合わせに来るのだろうか。

どんなドレスを着るのだろうか。

どんなことを話そうかな。


そんなある意味一番幸せな早々ができる時間だ。


でもお店でみはるさんと呑むと実際にはそんな現実は甘くない。

当然だけど人気があるみはるさんは一度に何人ものお客さんが来たりするので、ゆっくりとお話しできる時間は案外少なかったりする。

だから、この同伴でご飯を一緒に食べる時間は僕にとっては何よりもありがたい時間だったりする。

この時だけは他のお客さんに邪魔されずにお話ができるからだ。


そんな悲しいことを考えていると、通りからみはるさんがやってくるのが見えた。


今日はパーカーにスキニージーンズとラフな格好だが、スタイルがいい彼女にはそんなシンプルな服でもよく似合っている。

口角が自然と上がっているのを自覚するが、なんとかニヤケ面にならないようにだけ精一杯意識して挨拶をする。


「みはるさんおはよ。今日は同伴ありがとうね。久しぶりに会えて嬉しいよ。今日も相変わらず可愛いね」


「のぞむさんもおはよ!こちらこそわざわざ来てくれて嬉しい!たくさんお話ししようね!さ、ご飯食べに行こ。」


そう言って彼女は僕の手を引いて予約したお店に向かって移動を始める。

月に一回の僕の贅沢はここから始まるんだ。

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