3話 ラミュマとシーニャの王都遊覧
1
シーニャがなんでもないように言ったその罪の告解。
本人はそれを罪であるとも告解であるとも思っていない口ぶりに、アルマスが声を荒げる。
「おいおいおい……!!レィナー……レイ!流石に冗談で済まないぞ!」
「落ち着けアルマス。
確かにシーニャは殺す事に躊躇いはないが、社会基盤を崩さない為にそれを律しているのも事実だ。」
「そんな悠長な……。」
納得のいかないアルマスに対し、レイは告げる。
「アルマス。僕を、信じてほしい。
彼女は僕が見出した臣下なんだ。」
「……それを、言うとズルいぞ。分かったよ。」
アルマスが平静さを取り戻した頃、サリーが聞く。
彼女はシーニャの師でもあり、気性が真逆なのにも関わらずシーニャをよく理解しているようであった。
「シーニャさん。なんでそんな事をしたの?
確かに殺人に躊躇いがなくても、するなと言われた事を我慢しないような子じゃないと、私は思ってるわ。」
「それは、ええと――。」
2
昨日の朝。私とラミュマさんは、王都に遊びに行っていました。
レイさん達も行っていたそうですね。
ラミュマさんは王都に住んでこそいても王宮から出たこともなければ、ましてや自由に自分の脚で出歩くなんてのは無かったそうで。私と二人で遊ぶという形ではありますが、自由に遊ぶ機会を得てうきうきと喜んでいました。
ラミュマさんが目についたお店に片っ端から入っていきました。ランチ・ファッション・スイーツ・ファッション・花屋……と女の子らしいような、もしくはそうでもないような巡り方をしていました。私も田舎の出ですので、そういうものについてはラミュマさんと別方面に疎いのです。
そして花屋を出て、最後にどこかで食事をして学院に戻ろうと話していた時の事です。
「こんにちは、ラミュマ様。私、ココルア公国使節団のムネジアと言います。」
ココルア公国と名乗る、記憶のどこかで聞いた事があるなとしか覚えの無い人間が、ラミュマさんが呼び止められました。恐らくはかしこまった服装なのでしょうが、フーニカール王国では馴染みのない装いをしていました。
このような怪しげなものは一蹴してしまえばいい。そう思っていたのですが、
「!
わたくし、オーグリード家令嬢のラミュマ=フォン=アーグリードです。父にご用事でしたか?」
何故か、ラミュマさんの側が乗り気であったのです。このような国が出入りしているなどは公には聞いた事がありません。ですが、彼女は王家であるので知らぬ所で何か関係や交易が成されている可能性は十分にあるでしょう。
「ええ、その商談が終わったところです。
どうでしょう?よければお食事など。」
「まあ!素敵ですね。御同席しますわ。」
ラミュマさんはなんと、それに着いて行くというのだ。
貴族の繋がりや交流に関しては、私は見識が薄い。そうするというのなら私は迷惑をかけてしまいます。ですので、そこは素直に身を引いて一人学院に戻っていようとしていました。
ですが、私としては彼らについていまいち信用がし切れませんでした。確かに貴族様なのかもしれませんが、その礼儀作法が整っていないように感じられたのです。十五歳のラミュマさんの方が、ずっとしっかりしている。言葉遣いも何か怪しい。
「ラミュマさん。ご馳走が出るんでしたら私も同席していいでしょうか?」
「うーん。どうでしょうか、ムネジア様。彼女は私の学友であり、友人です。」
「ええ、いや、そうですね。ラミュマ様の御友人とあれば。勿論ご招待します!」
「ご厚意痛み入ります。それではシーニャ、共に参りましょうか。」
「はい!ありがとうございます!」
全部嘘でした。なんなら、腹など減っていません。
ですがこれではっきりしました。会食に、友人を身分も聞かずに招待するなど聞いた事もありません。いくら平民でもそれぐらいは分かる、いや、平民だからこそそれはよく理解しています。
3
そこまでシーニャの話を訊いていたアルマスが口を開く。
「確かに、シーニャの疑念は正しい。
彼の国、ココルア公国はつい先日に革命が起きた国だ。それに伴い殆どの貴族が処刑されるか領地を没収され、革命の中心人物だった人間が今、実権を握っている。」
そこまで聞いていたサリーが口を挟む。
彼女も貴族の出だ。そういう事にはある程度素養がある。
「確かに、そういう状況下でこの国に来る事自体がもうきな臭いですよね。
実際の所は魔法石を盗み出そうなんて企んでもいましたし。素養や作法が無いように感じられた、というシーニャさんの印象は正しかったと。」
続けて、レイもその意見を述べた。
「革命の是非を貴族である僕が問うにはどうしても恣意的な意見が含まれる事には変わりないからなんとも言えないが、少し暴力的なやり方はいただけないね。
そこまで知っているからこそ、バリガンは名前を聞いただけで真っ先にワラチフを助け出したんだから。」
「へえ、そういう事が……。
そういう繋がりが把握できていれば、ラミュマさんもついて行かなかったとは思うのですが。ラミュマさんも、革命が起きたという事は知っていましたし。」
「おっとすまない、話を遮ってしまったね。続きを頼むよ。」
「分かりました。それから私はラミュマさんと一緒に、フーニカールの郊外にある屋敷に招かれたんです。」
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