序章 漂流者ツバキ

 ツバキは王国に流れ着いた旅人である。

 齢は十五。低身長で白い髪を短く揃え、筋肉の着いた無駄のない肢体をしていた。

 そして何より皆白い肌をしている中、彼女だけが褐色のような肌を持っていた。

 だが彼女は負けず、この地から逃れずに働き始めた。

 衆目は彼女を嫌ったが、そのような風説なんて死の危険が蔓延る故郷に比べればずっとマシなのだと。


 彼女の持つ芸術的センスと、故郷でかつて習った技を活かしてカルラシード家の庭師として駄目元で応募してみた所、そのセンスが目に留まり見事合格し、庭師としてメイドになる事が出来たのだ。


 しかし喜ぶのもつかの間、その肌の色から忌み嫌われ、ありもしない風説を流され始める。そのぶっきらぼうさもそれに拍車をかけた。

 そして挙句の果てにはそのセンスと腕前に嫉妬し、庭師の中でも段々と浮き始めていた。


 そして彼女は「流刑地」であるカルラシード家次女に仕えよと命じられる。

 しかしろくに事情に興味もない彼女は、当然の如く返答して喜んだ。

 王国に仕える訳でなく矜持がある訳でもなかったからだ。

 そして辺境の地へと飛ばされる。


 病弱な次女の名は、レィナータ=フォン=カルラシード。

 第六継承権を持つが、元々病弱で、すぐに死んでしまうような体の弱さを持った儚い少女であった。

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