第8話 結婚
バスを乗り継いで幾星霜、やっと着いた招待状に指定されていた会場は、大きなお庭が囲む、更に大きな大きなお屋敷だった。
「小さい披露宴って、コレが?」
庭にかかった長い敷石歩いていくと、光っている窓が見えて、屋敷内を走り回って窓の光を遮ったり、楽しそうに遊ぶ子どもの声たちに徐々にお屋敷の全貌が感じ取れた。
目の前の大きなドアと自分の家のドアを比べてみてしまう、当然とでも言うべきかいつもの様に頭を下げてドア枠を潜る必要もなさそうな、ドアの前に立つと、
自分の腰より低い位置にドアベルとドアノックの輪っかとが両方あって、どっちで宿主を呼ぶべきか悩んでしまう。
「…あんなにはしゃいでるんだもんな、ノックじゃ聞こえないか。」
ジリリリー
ドアベルの焼き切れた音が鳴って、騒いでいた声が止んだ、そしてしばらくすると底なしの元気さを持った少年がドアをひらいた。
「ハーーイ、ッてジャック先生!」
「来たよ〜グウェンくんおめでとう、」
祝いの言葉を言い切る直前、グウェン少年に強引に手を引かれて、そこまで抵抗しない様に歩いていると屋敷の中まで引き込まれる。
「ジャック先生どうですか!」
部屋に入って、一目である違和感の正体が分かったお屋敷だと思っていた、この屋敷が一つの大きな会場だったのだ、
綺麗な装飾を施された部屋を一望できるところに案内されて、少し高めのお立ち台に立ったグウェンが聞いてくる。
「コレは、全部がすごいねっ、」
カーテンやカーペット、部屋全体のコーディネートはプロがやった様な、豪華絢爛の絶妙なバランスだったが。
部屋の飾りは子供の感性で作られた様で、
リボンを二階から落として、至る所の柱に巻きつけてジャングルにしたり、
クレヨンで線路や人の顔だったりを描いて、絵の具のバケツに突っ込んだ手で、床にポタポタと垂らしながら手形をつけたり、
すごい複雑な形の☆だったり♡のマークの色紙を壁、天井、床、果ては自身の体にも張り付けたりして、広い屋敷が埋まってしまうほどに自由に飾り付けられていた。
「オーイ、お客さんだぞー!」
グウェンの声が響いて、走り回っていた子供達が静かになり集まりだして、物珍しい様な目で見られたが、すぐに歓迎ムードになる。
集まってくるのは子供に子供、見渡す限りの子供、そう周りには子供だけしか居ない。
「そういえば親御さんは?」
「あとで来ます、料理とかプレゼントとか持ってきてくれるんです。」
なんとなく思った質問にもグウェンくんは
キラキラした目で、説明してくれる。
良い子に…
そんな感傷に浸っていると、静寂を突き破って少年の体から出てきた。
腹の音、グーー〜
目がキラキラしてたのは、お腹が空いていただけなのかもしれないな。
「ごめんねグウェンくん、私が招待状に気付けなくて、急いできたからプレゼントとかの準備ができなかったんだけど、」
「いえいえ、僕がサプライズにしたかったんですよ!配達員の人にもお願いして……ジャック先生には綺麗な僕たちを見てもらいたかったし。」
「うんありがとうね驚いたよ、急に結婚なんて、まだ式は始まらないんだね、じゃあその間に。」
ジャックの持ってきた、大きなカバンを開く
と仕事中や縫い物をしている最中よく着ている、エプロンが飛び出してきて、一人でに着られに動いた。
いつのまにかそこに立っていた、ジャックは両手を広げていて、エプロンが体に当たると体に肩紐が巻き付いてきて、最後の仕上げにジャックが後ろで結び、
空中に放り出された針、裁ち鋏をキャッチして、両手に刃物を持ちジャックは構えた。
「今から作って見せよう。」
ジャックのその姿を見た子供達から悲鳴が上がり、その場のノリに乗って嬉々とした声も上がり、そのままの意味で本当にそこにいた雲の子を散らした。
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