第7話 誓約


『拝啓 ジャック ぬいぐるみの先生


このたび私たちは結婚式前婚約式前提の

誕生日会を包んだ誓約式を

挙げることとなりました


誓約式と言っても

結婚式と特に変わりはありません 

つきましては日頃お世話になっている皆さまには私たちの新しい門出に 

立ち会って 見守っていただきたく 

小さくではありますが披露宴を

差し上げたいと存じます


ご多用の中 誠に恐縮ですが

ぜひ御参列くださいます様

ご案内申し上げます ツラツラ〜〜』


そんな形式めいた堅苦しい、丁寧な文章の書かれた金色の招待状には、どこか既視感のある明るさと元気さを感じた。


「……結婚式、そんな大事な事におれを呼ぶなんて…誰のだ?」

昔のつらい経験から、口をついて出た言葉を吐き捨てつつ招待状の下の方に目をやると、同じ苗字の二人の名前が書いてあった、


敬白 グウェン

   フィニー


 元々白かった肌がより人間の肌の色から遠ざかった顔面蒼白、コヒュッと喉の奥で息を殺す音が鳴って、寝起きでそれほど開いていなかった、目が見開かれる。


「あの二人のけっけッ、 グウェンとフィニーの結婚式の招待状!?」


ジャックの目の前には、その二人の顔が思い浮かぶ、今まではグウェンが裁縫の練習を手伝っていただけだったが、最近ではグウェンに続きフィニーも遊びに来たり、ぬいぐるみを買いに来たりしていたので、より鮮明に

二人の似たようなエガオが壁に浮かぶ。


そしてジャックの脳内にいる、二人に霧が集まってくる様にふわりと白い衣装が現れて、着付けられる。


お幸せにね、

おれはあの時グウェンが声をかけて自分の治せるものを遠慮して、初めての顧客を手放そうとしたから、おれの生徒として背中を押した時、そう言って先生  こ  ん生徒な  関係は終わりになる覚悟でしたつもりだったのに、

まだ交友こんな関係が続いていた。


それでも、あの二人にはおれが居ない方が…幸せなんじゃないかと思って、無視をして逃げてみようかなど嫌な事を考えて、気を紛らわせるために仕事をし続けて、つい昼を過ぎてしまった郵便ポストを開いていたら、



こんな衝撃を受けていた。

「付き合って十数日も経ってないでしょうに、最近の子供は色々と早いなぁ…アハ、

ハハハ…まあ交流も大事か、」


今読んだところまでで半分も届いていなくて、じっくりじっくりと読み進めていくと、最後の一文に書かれていた、開催日時が今日だったので、

大きな皮のカバンに荷物を押し込んでは、荷物を取りに行ってを繰り返して、目立たない様なでも清潔な雰囲気の黒いスーツを着て、店を出ながら急いで店の看板を裏返して閉めた。

走って出かけようとするが、何か手に持っていない事に気づいて足早に店に戻り、また大きなカバンを持って出かけた。

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