第6話 少年に電話
次の日の学校、
だだっ広い土地全てを覆う、青く水々しい長さも短く切り揃えてある芝生広場の校庭に、見合わない小さい学校が見える。
だが近くに寄ってみると乳白色のレンガの角が所々かけて、レンガ調の壁なのに小学校の優しい雰囲気を作っている、学校は芸術的な格子が窓を護り屋根まで伸びて、より校舎の高さを引き立たせる、
中央の塔にはイギリス特有の書き方をしたローマ数字の時計が堂々と校庭を見渡し、塔全体が誇り高く聳え立っていた。
※数字のⅣをこう書かずにⅠⅠⅠⅠこの4本線で表すことで、時計のように円形に書かれているとⅥと見分けがつかない問題を解消した書き方です。
まるで自分は魔法が使えそうに感じさせるような景観をした小学校。
子供達が続々と登校してきて、だんだんざわざわしだす教室と廊下、
一足早く登校したグウェンは、
昨日自分にクラスのみんながいる前でぬいぐるみを引っ張り出して男のくせにと何かを引き合いに出して、演説めいたことをして恥をかかせた、少年たちを待っていた
顔に絆創膏を貼り付けた、いかにもな制服の着崩した着こなしをした、少年たちが騒がしい廊下に道を作りながら歩いてきた。
昨日は怖かったのに、今日は何もない、足も震えてないし、呼吸だって快適で、心臓も正常に脈拍を刻んでいる。
苦手意識だけが体に残って、拳を固めて足も重くする。
それでも、
「お オイ」
それでも、グウェンは威勢よく少年たちに声をかける。周りが動揺と哀れみにも似た同情をする声が聞こえる。
「グウェン、どうしたの?」
少年たちは昨日のあんなに酷い事しながら、本当に忘れたのかすっとボケてるのか、分からない顔をして、笑う。
「俺の趣味のことを馬鹿にすんな…いでください、」
タメ口と敬語が混じった、あまりにも自分の言った言葉が間抜けな言葉で心が折れそうになる。
そこに周りから目の前からクスクスと嘲笑が纏わりつく。
ぬるい温度だけどコレが長く続けば、いつか人は落ちる、壊れる。
そんな中、こんな弱腰で臆病で自分で決めた事もすぐ変えてしまうような自分にも全力で力をくれる二人が思い浮かぶ。
「本気だぞ、次したら承知しないぞ。」
街一番もしかしたら世界で一番怖い顔の人から見て習った怖い顔、そんじょそこらの犯罪者も逃げ惑う顔だと思う。
それが出来る全力だから…
「「「え、あすいません絶対!絶対しません!!だから許して下さい!」」」
少年たちは蟻の子散らすように消えた、
怖い顔の余波に逃げた人もいるが、同じく少年たちに困らされていた人達が握手やハイタッチを求めて、周りからは拍手の渦が舞い降りた、グウェンは流れのままに周りにいた人達とハイタッチをして回った。
カランカラン!!
「言えたよジャック!」
笑顔に戻ったグウェンがドアのベルを掻き鳴らす。
「おー良かったねぇ、グウェンくん」
「聞いて聞いて、ジャック」
カバンを肩紐より上に浮かせるぐらい、軽快に走って飛び込んでくる。
「俺がね、ズバッと言ったらアイツらまた、バカにしてきたんだよ、それで俺がちょっと怖い顔してね!そしたら!!」
そして嬉々とした顔で怒涛の言葉のマシンガンを狭い店の中でぶっ放される、流石にジャックも押されて目を閉じて頬に汗を垂らす。
「ちょっと落ち着いて、お茶でも飲んでからにしよう、なんでも聞くからね。」
お茶をカップで持ってきて、グウェンに勧める。
「それで……アレ?どこまで話したっけ、
ああそうだ、でね!俺ジャックみたいに出来たよ!」
ズキューーン
子供の満面笑顔で心を撃ち抜かれる。
心臓を掴んで無理矢理にでも落ち着かせないとこの子の話を遮ってしまう。そんな一心で耐える平常心を保とうとする。
グウェンの話は、今日の出来事だけで数時間と続いた。そして午後の時間を鳩時計ならぬ、ぬいぐるみ時計が知らせる。
「ア、開店の時間だ。ってマズイ!まだ何もやってないぞ!」
ジャックは頭を抱えて悶える。
「手伝おうか?」
「うん頼みたい、まずはカーテン開けてもらって良い、あのドアの横の!」
眼鏡を外すのも忘れて、転びかけながら店の奥に入っていった。
「分かった!」
グウェンは走って窓のところまで行くと、少しだけ埃が溜まっていたぬいぐるみ達を掃除してピカピカの状態にして、それから真紅のカーテンを開ける。
「オイショオイショ」
少しだけグウェンの腕だと遠くにあって、開きづらいけど、頑張って両方の窓のカーテンを開く。
「ついでに店のドアにかかってる看板も裏返してOPENにしといて。」
「ウン分かった!」
カランカラン
お店の外に出るとそれと同時に、看板周りの電球がついて鮮やかさが一気に増して、子供の夢が広がる。
看板をOPENの方を表に向けて、
店の中に戻ろうとした時、ふと過去を思い出してショーウィンドウの方を見てしまう、
そこには知っている女の子が、
過去の自分と重なって見えた。
その女の子、フィニーに優しく声をかける。
「どれが一番好き?」
「裁縫が趣味なの?」
想像してた選択肢と違う、答えが返ってきて驚く。
「ウン」
真剣な顔でそんな事を言われたら嘘なんてつけなかった、少年たちから何度も言われたから、男のくせに変な趣味とこの子にも思われてしまうと思ったら、
「じゃあ私のこれ直せる?」
更に驚いた、フィニーは壊れかけのサメのぬいぐるみを取り出した。
「直せるけど…」
「お願い直して、お母さんに貰ったプレゼントなの。」
「そんな大事なものなら…でも俺より」
チラッ
遠慮がちに言って、ジャックを紹介して断ろうかと思って店のドアの方を見ると、ドアを開けてそこに両手をへそ前に合わせて礼儀正しく立っていた。
「行ってらっしゃいませ、頑張って。」
店員行儀で言われ、その後に力をもらう言葉を言われた。
長い時間共に過ごした者同士だからこそ、
それだけで通じ合った。
「さようなら!」
大きく手を振って、離れる
「昨日のアイツら、変なこと言ってたから
私がボコボコにしといたよ!」
「え!?そ…それは、え?
ありがとう?」
「早く来てよ〜」
「ウ、ウン!」
グウェンとフィニーは楽しそうで嬉しそうな顔を同じ制服を引っ張ったり小突いたりして夕日に消えていく、
ぬいぐるみ屋は忙しなく、店の中を走り回っていた。
次の日
「あのさあのさ〜聞いて聞いて〜」
アレ?昨日と変わらない!?
……まあ良いっか。
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