第3話 街灯インタビュー 上
(私は今すごいを緊張しています。)
緊張した面持ちの短髪の女性は、右手に万年筆を持ち、左手にはメモ帳を持って、今か今かと先輩の話を聞いて、メモすべき箇所を探っていた。
(有名にして超難関新聞社クローバーファイルドに入社したスーパー新人記者、
と思って強い意志でやらなくちゃ今にも失敗してしまいそうです。でもでも有名で難しい新聞社に入社したのは本当なんです、スーパー新人記者の話は置いといて…えへへ)
「オイ!聞いてるのか、モナハンくん。」「ハッハイ!、すいません聞いてませんでした!」
数人の記者の前でインタビューのイロハについて話していた先輩が、
何か別のことを考えてニヤニヤしていたモナハンに睨みを聞かせる。
唐突な名前を呼ばれたことにびっくりしたモナハンは、すぐに唯一の特技の柔らかい体を使って、頭を下げる角度が90度を超え、ほぼ真下に頭を下げて謝罪をする。
(早速やっちゃいました、気をつけているんですけど妄想癖があると言うか、考えている事が顔に出ちゃうし、本っ当に反省してるんです〜すいまぜん〜〜)
必死に頭を下げ心の中で泣く。
「もう良い、今までの要点を意識して街頭インタビュー、今日の正午までにネタを三個探してこい、いいな!」
「「ハイ!」」
「ハイ〜」
統率の取れた兵隊のような雰囲気の中、
一人の腑抜けた声が遅れて聞こえた。
二人で回ることが決められている街中インタビューで、いつもの通りモハナンは一緒に回ろうと言っても断られてしまう、
そして仕方なくいつも組んでいる男の人と組む。
「今日もよろしくね、」
「またお前かよ、インタビューを早くやるぞお前は考え出すと長ぇからな。」
「ハイハイ、実は考えてたんです、題材。」
モハナンの提案で、あなたはどう褒められたいですか?を題材に話を聞いていくことを決めた。
街の人々に話を聞いて周り順調に、意見の数を集めている、しかし一つ目のネタなのに時間は刻一刻と流れて行った。
「結構集まりましたね、意見としては……
髪を褒められる、建てた家を褒められる、幼女に甘やかされたい、などなどかー、なんか変な人もいますね。」
メモ帳に書かれた10人の意見は文字の通り、十人十色の意見があって、これを記事にまとめたらどんなに良い記事になるんだろうと目を輝かせていた。
一方で男の方はしきりに時計を気にして、
モハナンにも何度も言っていたことを忘れているなと感じて、また妄想の世界に入ってるやつの肩を掴む。
「それはもう結構ですよモハナン。そろそろ二つ目のネタも!」
「あ!ちょっと待ってくださいあの人なんてよく無いですか?」
子供みたいに次の標的を決めて、指を刺す、
ロンドンの街並みの中一人だけ異様な風貌をした青年が目に留まる、そこにいたのは蛇のような彼、ジャックザニパーだった。
「あの顔…少しは話の内容になるのか?」
すぐに走り出したモハナンに、男も何となくあの人ならネタになりそうだと、渋々機材を入れたキャリーバックを持ってついて行った。
「すみませんちょっとお話いいですか?
私ここで街灯インタビューをしてる者なんですが、あなたから特殊なオーラがあったので伺いました。」
「え はい、話ですか?良いですよ。」
眩しい目だなぁ、羨ましい。
「ズバリ褒められるならどんな褒め方が嬉しいですか?」
目を輝かせたままペンをマイクにみたてて、背の高いジャックの口元に頑張って掲げる。
ジャックは少し手をモジモジしながら、
照れくさそうにインタビューに答え始めた。
「仕事をしてるので、手際がいいねとかですかね。」
「ちなみに、どのようなお仕事を。」
「最近は(ぬいぐるみの)処分です。
詳しく言うと(ぬいぐるみの)体を縫ったり、目を付け替えたり、体の中に入ったワタを詰めたりですかね。」
その男から出てくる言葉一つ一つが、男の見た目も相待って、殺人的用語すぎて二人は何かヤバい人に声をかけてしまったんじゃ無いかと思い、小さく目配せすると少し離れた場所で話し合った。
「早く逃げましょうこの人まずい人ですよ僕まだ死にたく無いですよ、あの顔見ました?あの眼は多分何人も…」
「相棒くん落ち着いて、まだ職業が医者の可能性も、多少僅かに、希望はあります。
…あのもしかしてなんですが、医療関係のお仕事をしているんですか?」
こっちを横目で見ながら
「いや違いますよ、でも似たようなものかもしれませんね。(ぬいぐるみのお医者さん的な意味で)」
ジャックの心の中のことを知らない記者たちは、受験校に落ちた受験生みたいに、人生が終わったような顔面蒼白で固まってしまう。
((あ、こんな時こそ平常心で話さなきゃ殺される))
「…他に褒められたら嬉しいこと、何かありますか?」
刺激をしないように他の人にもした、当たり障りのない続きの質問を聞く。
そろそろ音を立てないように近づき、またペンを向ける。
「そうですねえー少し変なんですが…………その笑顔が素敵とか、」
かなり恥ずかしそうに顔を赤く染めて、
顔を掻く、大きく開かれた口から伸びる長い舌で。
先ほどの言葉とのあまりの温度差に、
モハナンが、「プッ」と吹き出してしまう。
腹を押さえて声を殺そうとするが、それでもわかりやすい程に肩を揺らしている。
男は慌ててモハナンをどうにか黙らせようと、前を向けないでいるその首に手刀を一刀。
ガクンッ
導火線がついに燃え尽き、爆弾に火がついた、「あーはっはっはははー!はひー」
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