第48話 トップクラン4
「ちなみに、ハート・オブ・スターって何に使われるの?」
ただ希少なだけのアイテムには『無限クレジット』なんて冗談みたいな値段はつかない。ハート・オブ・スターには何かしら重要な使い道があるはずだ。キララはそう考えた。
「ハート・オブ・スターは、宇宙戦艦の建造に必須の素材なんスよ。宇宙戦艦の心臓である重力炉のコアパーツとして使用されます」
「例外的にハート・オブ・スター無しでも宇宙戦艦を建造した例があるが、それを含めても、今のSOOに宇宙戦艦と呼べる船は12隻しか存在しない。無論、宇宙戦艦はSOOで最強の乗り物だ。1隻あれば、操縦者1人でプレイヤー1000人を同時に相手取れる。操縦者が、例えレベル1の初心者だとしてもな」
レベル1の初心者が一騎当千の戦士になれる最強の乗り物『宇宙戦艦』。その建造に必須のハート・オブ・スターに値段がつけられないのは当たり前のことだった。
「宇宙戦艦……まさか戦艦が空を飛ぶのか!?」
カガミとナナホシは、銀華に頷いた。銀華は目を輝かせる。
「それは凄いな! きっと壮観だろうな! しかし……」
銀華は自分のアイテムボックスの中に鎮座するハート・オブ・スターを見つめた。
「……こなたは戦艦を作るつもりは無い、はっきり言って無用の長物だ。ナナホシ殿、買い取ってくれぬか?」
ナナホシは首をぶんぶんと横に振った。
「無茶言わないでくださいよ、私じゃこんなの扱いきれないっス。どこかのトップクランに売るしかないっスよ」
「とっぷくらん?」
トップクランとは文字通り、SOOの中でトップクラスの実力と知名度を誇るクランの通称だ。
「今のクラン同士のパワーバランスを考えるなら、『ターミナルオーダー』か『反乱軍』だろうな」
「っスね。他のところに売ったら多分『
キララが口を開く。
「帝国って?」
カガミとナナホシはキララを見つめた。
「……『
キララは首を傾げた。
「最大と最強はともかく、最悪ってどういうこと?」
「初心者狩りが初心者から奪ったドロアンプルの大半が、帝国に流れている……と言えばお分かりっスかね」
キララの瞼がピクつく。それがどれほどの悪行なのか分からないキララではなかった。
「それだけじゃない。フリードのぼったくり商店街だって、帝国の息が掛かっている連中が大半だ。他にも、クランぐるみでの暴言・煽り行為はもちろん、惑星レベルでの狩場の占領、気に入らないクランに対する数ヶ月にも及ぶ執拗な集団粘着PK、特定のアイテムの買い占め、そして極めつけが、
普段無表情なキララの口角が釣り上がる。可愛らしいが、どこかに狂気を孕んだ満面の笑みであった。
「……すごいね、諸悪の根源じゃん。ところで、質問攻めで申し訳ないんだけど、
「……一番最初の開拓クエスト中に説明されるはずだが? SOOのメインストーリーの根幹になる概念だぞ?」
「いや、だって私開拓クエスト興味無いし……」
SOOはMMORPGだ。プレイヤーの自由な遊びを邪魔しない程度の、ふんわりとしたストーリーはちゃんと存在する。SOOでは開拓クエストがそのストーリーにあたる。プレイヤーは宇宙の開拓者として、開拓局という組織の元で働くのだ。なお、開拓クエストを全く遊んでいないキララは、SOOのストーリーの一切を知らない。
キララと同様に
「
宇宙の平和を守るために、世界中のプレイヤーが一丸となって強敵に立ち向かう超絶激アツイベントクエスト。それが
「へぇー、みんなで協力する激アツイベントクエストってわけだね。…………ごめん、最後の方聞き取れなかったんだけど」
「
「……は?」
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