第47話 トップクラン3
部屋の中に再び沈黙が流れる。キララのこめかみに、じわりと汗が滲む。銀華は、意味がわからず再び首を傾げた。カガミは、口を押えていたナナホシの手をひっぺがした。
「し、信じられない……まさかお目にかかれる日が来るとは」
「私も実物は初めて見ました……しかし本当に不味い……11個目のハート・オブ・スターが発見されたとなれば、SOO中で大騒ぎになるっスよ……」
銀華はおろおろと焦った。
「つ、つまりどういうことだ? これはお宝なのか?」
「お宝なんて言葉では足りないっス。このアイテムに値段がつくとしたら、それは多分『無限クレジット』とかになります。馬鹿みたいな話ですけど冗談じゃないっス。……ホント、どうやってコレを見つけたんスか?」
「む、無限!?」
「その事なんだけど」
キララはおもむろに口を開いた。
「銀華さん、銀華さんはPKした相手からアイテムを盗ったこと……あるよね?」
「ん? あぁ、まぁ……」
銀華は周りのプレイヤーの真似をしてPKをしていた。ならば当然、PKした相手からアイテムを奪うところまで真似をしてもおかしくはないだろう。
「ねぇ、銀華さん、仮に私が死体になったプレイヤーだとして、銀華さんはどうやってアイテムを盗る? やって見せてくれない?」
「え? それはまぁ……普通に……」
そう言って、銀華はキララのジャケットのポケットに手を突っ込んだ。その様子を見て、カガミとナナホシは『あぁ』と納得の声を零す。
「カガミのお兄さん、言ってたよね。『死ぬ直前に貴重なアイテムを実体化させて、盗難を防ぐ』ってテクニックがあるって。けど、アイテムボックスの操作方法を知らない銀華さん相手には、それは逆効果だった」
「なるほど……道理で貴重なアイテムばかり持っているワケっスね」
カガミは銀華のアイテムボックスをスイスイとスクロールする。
「……宝の山だな……なるほど、銀華さんは、皆が必死に守ろうとする程の貴重品ばかりを、無意識のうちに集めていたワケだ。しかしアイテムボックスの操作方法が分からないのにアイテムをどうやって収納……あぁ、自動拾得か」
キララとナナホシは頷く。
「そして、偶然ハート・オブ・スターを発見したものすごく幸運なプレイヤーは、ものすごく残念なことに、よりにもよって銀華さんに出会ってしまった……というワケっスね」
さっきからずっと置いてけぼりにされている銀華はおろおろと慌てた。
「つ、つまりどういうことだ? こなたはまた何かやってしまったのか?」
「……思うに、その偶然ハート・オブ・スターを発見したプレイヤーは、その価値が分かっていなかったんじゃないのか? ハート・オブ・スターの価値を本当に理解しているプレイヤーなら、見つけた途端に安全な都市にとんぼ返りするはずだからな」
「でしょうね、恐らく、『よく分からないけど、
銀華は暫く考えていたが、しょんぼりと俯いてしまった。
「う、うう……よく分からないが、こなたはまた何かやってしまっていたようだな……」
3人は慌てて銀華のカバーに入る。
「気にすることないよ、SOOはゲームなんだから、銀華さんに負けたそのプレイヤーが悪いんだよ」
「そ、そうだ。そんな貴重品をフラフラ持ち歩くそのプレイヤーが悪い、SOOでは強盗は日常茶飯事なんだから、アイテムを奪われたくなかったらきちんと自衛すべきだ。絶対にそいつが悪い」
「ご、強盗……」
カガミの失言で銀華が余計にしょんぼりしてしまったので、キララとナナホシはカガミのスネをげしげしと蹴った。
「痛って! いやVRだから痛くないけど! やめろ馬鹿! 攻撃判定発生したら衛兵が飛んでくるんだぞ!」
「……すみません、私が変に大騒ぎしたせいで余計な勘違いをさせてしまったようですね、申し訳ないっス。銀華さんは、レアアイテムを手に入れたんスからむしろ喜ぶべきっスよ。PKをして、プレイヤーからアイテムを奪うのだって立派なアイテムの入手手段っス。別に、悪いことじゃないっスよ」
SOOでは、PKも、死体からアイテムを奪う行為も、ゲームシステムとして認められている。PKをしたりされたりするのが嫌なら、そもそもSOOをやるべきでは無い。SOOをプレイするということはPKも強盗も認めるということなのだ。……もっとも、PKをすれば嫌われてしまうのは言わずもがなだが。なお、初心者狩りはどんな理由があれ許されない。
「そ、そういうものだろうか」
「そうだよ、SOOはゲームなんだから」
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