第10話 粘着PK 3
キララはノワールに連れられて、様々な武器が展示された部屋にやってきた。暗く広い部屋にぽつりぽつりと展示された様々な武器に、まるでスポットライトのように照明が当たっている。
「さて、キララ様。キララ様は本日どのような品物をお探しでしょうか」
「今使ってるヤトノカミって銃があるんだけど……」
キララは、ヤトノカミの弾丸の仕様が気に入らないという話をした。
「ヤトノカミ専用弾のカスタムタイプですね、もちろんご用意がございます」
「あるんだ、さすが」
ノワールが指を振ってホログラムのメニュー画面を操作すると、空中に大きなジュラルミンケースが現れる。ノワールが中央の大きなテーブルでジュラルミンケースの蓋を開けると、中にはヤトノカミの専用弾が黒いクッションの上にずらりと並べられていた。
「向かって左から、物理貫通力特化の徹甲弾、対エネルギーバリア弾、榴弾、そして、カスタムの無い通常弾となっております」
「榴弾なんてあるんだ」
「はい、ヤトノカミ専用弾内部の曳光剤を取り除き、代わりに爆薬を充填してあります。着弾の衝撃で内部の時限信管が作動し、攻撃対象内部で爆発します。SOO世界で最も威力の高い爆薬である電子励起爆薬を採用しており、この弾丸の爆発だけで攻撃力42万相当のダメージを与えることが出来ます」
キララは一瞬、ノワールが何を言っているのか理解出来なかった。
「42万……? 爆発のダメージだけで?」
「はい、こちらは超高難易度ボスの
そう言ってノワールはキララに
「エネルギーバリアの方が重いんだ」
「はい。対エネルギーバリア弾は内部にバリア発生装置をジャミングするための装置を搭載しているため、通常弾より重くなっており、物理的攻撃力・貫通力にも優れております」
キララが『装置』という言葉に反応を見せる。
「装置って……それ、弾丸の中で重量の偏りが出ていたりは?」
もし弾丸の内部に重量の偏りがあれば、弾道が乱れ、真っ直ぐ飛ばなくなってしまう。しかしノワールはそんなこと計算済みであった。
「ご安心ください。弾丸の内部で重量の偏りが出ないよう、専用に開発した特殊設計の装置を搭載しております」
これが一流か! と、キララは心の底から感心した。
「いいね……ところで、エネルギーバリアについて聞いてもいい?」
「はい、エネルギーバリアは実弾、光線を問わず、バリアの外側からの遠距離攻撃の威力を減衰させる防御装置です。バリアの減衰能が高い場合には、中途半端な攻撃は減衰どころか消滅させられてしまいます。一部の機械系モンスターや宇宙船などの乗り物に搭載されておりますが、プレイヤー個人もエネルギーバリア発生装置を装備することでバリアを使うことができます。キララ様のように、銃を使われるプレイヤーにとっては厄介な代物だと言えるでしょう」
そう言って、ノワールはキララをじっと見つめた。キララは首をかしげる。
「失礼を承知でお伺いいたしますが……キララ様は、チュートリアルはお読みになるタイプですか?」
「ホントに失礼でびっくりしたんだけど……私、意外とチュートリアル読むよ?」
「と、いうことは……もしかして、キララ様、開拓クエストをまだ1つもお受けになっていらっしゃらないのでは?」
キララとノワールの間に沈黙が流れる。
「カイタククエスト?」
「はい、要するにストーリーモードです。最初の開拓クエストの敵がエネルギーバリアを持っているので、本来であればそこでバリアのチュートリアルイベントが発生します……あの……そのクエストを受けなければ他のクエストを受けることができないのですが……もしかして、キララ様、まだ一度もクエストをお受けになられたことがないのでは?」
「え、うん、私PK以外に興味無いし……」
ノワールは呆れて大きなため息をつき、首を何度も横に振った。
「キララ様、それはいけません。これは一人の先輩プレイヤーとしてのアドバイスですが、開拓クエストは全て終わらせるべきです。いいですか? SOOはFPSではございません、MMOでございます。プレイヤースキルでゴリ押しをするゲームではなく、少しずつ装備やキャラクターを育成して緩やかに強くなっていくゲームなのでございます」
「でもそれは、めんどくさいよ?」
なんでMMOやってんだよこの人……ノワールはそう思ったが言うのをグッと堪えた。
「まぁそれは置いといて。私、このカスタム弾とても気に入ったよ。1発幾らするの?」
「こちら、1発あたり15万クレジットとなっております。ですが、ゲームを初めて間もないキララ様に、この金額のお支払いは難しいかと考えます。そこで提案が─────」
「いや、普通に払うよ。10発貰えるかな」
そう言って、キララは1本のドロアンプルをアイテムボックスから取り出した。
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