第7話 拠点確保

「ライン、起きて」


 目を開けると、そこにはスターがいた。その後ろにはラームもいる。少々眠っていたようだ。


「ああ、すまない。少し眠っていたようだ。」

「いいのですわ。あなたは疲れているのでしょう。ここまで私たちを引っ張ってきてくれたのですもの。」

「いや、まだやることは残っている。この村には男が少なく感じた。おそらく、村の外に何人かいるな。だから、そいつらが帰ってくるまでは、気が抜けないな。」


 そう。この村は明らかに家の数に対して人数が少なかった。それも、男のみが少なく感じたことから村の外に出ているのは間違いない。という事は、そいつらが村に戻ってきたときに我々が眠っていたら、命の危険性があるのだ。


「そうなのですわね。では、しばらく夜の間も一人は起きているようにいたしましょう。」

「でしたら、私とフェートが交代で行いましょう。ライン様とスター様はお休みになっていてください。」


 そうラームが提案してくれた。だが、私には考えがあった。


「ラーム、君の心遣いには感謝する。だが、私の魔法は少し特殊でね。人間を喰らった個体は自立行動しながら数日活動ができるのだよ。それも、私からの魔力供給なしにね。だから、しばらくは私の魔法に周囲を警戒させておくよ。」

「承知いたしました。」

「ラインの魔法は便利なのですわね。私はまだ自分の魔法を作れていないから、うらやましいですわ。」

「では、少し落ち着いたらオリジナル魔法の作成に手を貸しましょう。」

「まあ、ありがとうですわ。」


 そんなことを話していると、フェートが籠を両手に持って家の中に入ってきた。籠からいくつかの野菜が飛び出しているのが見える。


「ライン君、食べられそうなものを何個か持ってきたよ。家の中には鍋とかの調理器具もあるし、しばらくは食べていけそうな備蓄はあるみたい。でも、お肉はほとんどなくて、少しの干し肉しか見当たらなかったの。でも、料理は任せてほしいの! これでもお母様に褒められて……」

 フェートは、そう言いかけるとポロポロと泣き出してしまった。お母様と口に出していたことから、料理はきっと母親との思い出を思い出すのに十分なものだったのだろう。彼女もここまで心細かったのだろう。全員休息が必要だな。


「フェート、こちらにいらっしゃい。私が貴方と貴方のお母様のお話をお聞きするわ。でも、その前に、貴方はよくぞここまで戦い抜きました。私、スター・フォープスが貴方のその勇気と行動に敬意を表しますわ!」


 そう言うと、スターは近寄ってきたフェートを抱きしめた。フェートは、スターを抱きしめ返すとしゃくりあげながら泣いていた。

 だが、スターは流石だな。あれだけのことがありながら、弱気を見せないとは。自身より爵位が下の者がいるからなのだろうが、精神的にも肉体的にも疲労は溜まっているはずだ。だが、どこかで発散させる必要はありそうだな。元の爵位が同じ私が話すのが良いのだろうな。

 

 「全員、この辺りで少し休むとしよう。ラーム、寝床を整えてくれ。私は周囲を警戒するよう『侵食する粘性体』に指示を出してくる。スター、フェートのことは頼むぞ。」


 そう言うと私は民家から外に出て、近くにいる『侵食する粘性体』に指示を出した。


「周囲を警戒し、何かあればすぐに知らせろ。一体は私たちが眠る民家の側で待機していろ。」


 これで周囲への警戒は良いだろう。『侵食する粘性体』は個々が半径5 mと小さいが魔力圏を持っている。そのため、村の周囲に『侵食する粘性体』を配置すれば、容易に周囲を警戒することはできる。ただし、魔力を隠蔽できる魔法使いでなければ、と言う条件はあるが。これは今後の改良点だな。

 さて、ラームが寝床を整えている間に私もやれることをしてしまおう。そう考えて、私は家々を周った。その結果、特にこれと言ったものは見つからなかった。しいて言えば、村長と思わしき他の民家と比べて大きな家に文字の勉強に関する本と絵本があった程度だ。

 

「この村には特に何もなかったか。だが、拠点にするには向いているな。変なしがらみもなさそうだ。」


 私はそう呟くと、皆のいる家に向かった。

家に入ると、そこではベッドが4つ並んでおり、そのうちの一つにフェートが寝ていた。


「泣き疲れて寝てしまいましたわ。きっと心も体も限界だったのだと思いますわ。少しそっとしておいてあげましょう。」

「そうだな。私たちも休むとしよう。ラーム、寝床をありがとう。お前も休め。」


そう言って、私たちはそれぞれのベッドに腰掛ける。もう日も沈んでいるため、そろそろ眠っても良いだろう。


「さて、今できることもあるかもしれないが、今はとにかく休むとしよう。」


 私は率先してベッドに横になり、目を瞑って眠る体勢に入る。それをみて2人もベッドに横になったのが音からわかった。そんなことを考えていると、私は眠りに落ちた。



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