第3話 国外追放
目を開けると私は床に寝ころんでいた。眠っていたのだと思い周りを見ると、心配そうな表情のスターが目に入った。スターは金色の髪に水色の瞳を持った女の子だ。彼女の年齢は十一歳だが、年齢の割に大人びていて仲間たちを纏めるのに、大きく貢献してくれている。
それと同時に、部屋の中に今まではいなかった衛兵が扉の近くで椅子に座っているのが見えた。私が起きたことに気が付いたスターは、仲間を私の周りに集めた。
「ライン、起きたのね。心配したわ。」
「心配をかけたようだな。あれからどうなった。私が覚えているのは、魔力が制御できなくなって、魔力があふれたところまでだ。あ、いや、その時、部屋にいる人の心の声が聞こえてきた気がする。そこまでは覚えてる。」
「あの後、衛兵たちがラインを部屋から連れ出そうとしたのよ。私たちがそれに抵抗して、なんとかラインを連行させずに済んだの。心の声?っていうのはよくわからないわ。私には聞こえなかったもの。」
そう話すスターと周りの皆をよく見ると、顔に傷を負った者たちが多くいた。きっと私を連行させまいと抵抗した際に、衛兵によって暴行されたのだろう。それにもかかわらず、私を守ってくれたその勇気に私は感謝した。それと同時に怒りもこみあげてきた。私の家族を笑い、私の仲間たちを傷つけたあの衛兵に。そんなことを考えていると、スターから部屋の中にいる衛兵について話をされた。
「あのね、ライン。部屋にいるあの衛兵は、どうやら見張りの役割があるようなの。」
「見張り?もしかして、私たちの計画が奴らに漏れてしまったというのか。」
「そうじゃないみたいなの。朝にあの衛兵が部屋にやってきて、私たちに言ってきたのよ。『先日は私の部下が失礼をいたしました。本日から皆様の心と体の安全は私がお守りいたします。』という事らしいの。たぶん、昨日のラインの一件で衛兵たちの嫌がらせが、明るみになったんじゃないのかしら。」
「もしくは、私たちを取り込みに来たのかもしれないな。昨日の件は、発端の私が言うのも変だが、この部屋にいる者たちにかなりの不安を与えたと思う。だから、ここで安心感を与えることで、あの衛兵に心を開かせようとしているのかもしれない。」
「それは、可能性としてあり得ますね。後は、監視の我々の監視でしょうか。」
「ああ。その可能性も頭に置いておいておこう。今まで、国外追放後のシミュレーションはいくつかできた。まだ、色々甘い部分はあるが、あの衛兵がいては話もできない。ここからは各々の頭の中で作戦を考えておこう。」
私はそう言い、仲間たちを解散させた。そこからは、これまで出し合った情報をもとに作戦を考えていった。
この部屋に連れてこられてから何日が経ったかわからないが、ついに貴族の裁判が終わったらしい。そして私たちの処遇についても決定したようだ。判決はやはり平民としてこの国に残り与えられた仕事をこなすか、国外追放だった。追放先は、この国の西側の国境門からさらに西に二、三キロ離れたハイトの森の入り口に決まったようだ。追放の際は、幾日分の食糧と銀貨三枚が一人に与えるらしい。なんともお優しいことだ。追放先の場所から、食料に路銀まで与えてくれるとは。私にはあり得ないその発想には驚かされる。
そんなことを考えていると、さっそく衛兵が何人もこの部屋に入ってきた。そして、私たちにどちらかをすぐに選べと言う。その結果、この部屋では私たち九人のみが国外追放を選んだ。そうすると、国外追放を選んだ私たちの手を衛兵は紐で縛ると、そのままついてくるように命令された。全員をこのままハイトの森まで連行するようだ。
衛兵についていくと、少し大きな辻馬車に乗せられた。馬車に全員が乗ると、平民の魔法使いが馬車に乗ってきた。なぜ魔法使いとわかるかと言うと、魔力が体を包んでいたからだ。つまりそれは、魔力をコントロールできることを表している。魔法使いでない限り魔力を感じることはできないため、この平民は魔法使いであるとわかるのだ。そんなことを考えていると、魔法使いが魔法を発動させた。
『
その言葉と同時に目の前に魔法陣が出現し、私は眠りに落ちた。
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