再会
約束の1ヶ月を過ぎる日――彼女デイモンは俺の目の前から姿を消した。何も言わず突然に。
――俺はあいつを救えなかったのか?
そんな思いが頭に浮かぶ。いや、違うはずだと自分に言い聞かせるようと何度も首を横に振ったが無駄だった。
彼女が存在したという証明になるのは、何もなかった棚に増えた彼女の私物だけ。
結局、俺が彼女の助けになれたのかは分からない。彼女が元の場所へ帰ることができたのかも。確かなことは、もうここにデイモンがいないということだ。
*
それから2週間後のことだった。
机の上に手紙が置いてあったのである。差出人の名前はデイモン。
淡い期待を抱きつつ、その手紙を覗く。
『私は生きています。』
それだけしか書かれていなかった。だがそれだけで十分だった。もう会うことができなくても、彼女が生きている。それだけで救われた。
孤独の中にあった俺を救ってくれたのは間違いなくデイモンなのだ。
「ありがとう、生きていてくれて」
*
あれから数カ月、季節は冬となり――肌寒くなってきた頃のこと。
「おはようございます」
朝起きると、彼女の声が聞こえた。
「……デイモンなのか?」
寝室からリビングへと入ると、椅子に座りコーヒーを飲むデイモンの姿があった。
「やっと会えましたね」
彼女は優しく微笑んだ。
思わず涙が出そうになるがなんとか堪える。しかし、涙腺は緩みっぱなしで視界はぼやけたままである。
「
「ええ。わたし、悪魔をやめたんです。だから、ここに居られるんです」
そのとき、彼女は立ち上がり、俺を抱きしめた。
「今の私はただの人です。ずっと貴方の傍に居たいんです、貴方とこの世界を生きてみたいんです」
そう言うと俺の背中へ回していた手に力がこもる。俺もそれに応えるように彼女を抱き返すと、彼女はさらに強く抱き寄せてきた。
「もう、離しませんよ?」
そんなことを言う彼女が愛おしくて堪らない。
「……俺もだ」
そして俺たちは唇を重ねたのだった――。
悪魔との日常(短編) @AI_isekai @isekaiAi
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