第6話 初めての幼馴染
前世の俺はよく畑作業を手伝うのをサボっていた。
その頃の俺はつまらない人生が嫌になって、これから先もずっと続くと思っていた畑作業のことなんか全くやる気が出なった。
しかし、今の俺は違う。
(家族だって一種の仲間だ!)
今の仲間の大切さを学んだ俺にとって父さんの畑作業を手伝うことは苦ではなく、むしろ生活の中での楽しみの1つになっていた。
「父さん、トマトってもう収穫するの?」
「いや、まだだな。確かそろそろ村に行商人がやって来るからそれに合わせて収穫するぞ」
「わかった」
そうして今日の分の作業が終わり荷物を片付けて家に帰ろうとしたところで、背中を向けている方から俺の名前を呼ぶ声が聞こえた。
「アッシュく〜ん!!」
振り返って見てみると手に大きめのバスケットを持った少女がこちらに向かって走ってきていた。
「どうした、サーシャ? 畑仕事ならもう終わったぞ?」
「え〜ホントに!? せっかくお昼ご飯作ってきてあげたのに……」
この今俺の目の前で肩を落としてる少女……サーシャは今世での俺の幼馴染だ。
ほぼ同じ時期に生まれ家が近かったこともあって小さい頃から仲良くしていた。
前世でいえば、一応あいつも幼馴染のような立ち位置だったが、村にいた頃はほとんど話したことがなく別に仲が良かったわけでもないので幼馴染は言えないだろう。
…………王都に着いてからはもっと話さなくなったけどな。
そんな訳で俺にとっては初めてできた幼馴染であるサーシャは最初はとても引っ込み思案だったが、一緒に遊んでいるうちに俺の後ろをついて来るようになり、今でもかなり懐かれている。
(懐かしいな〜“守るべき仲間ごっこ”。一時期、サーシャが俺の後ろをずっとついて来るもんだからサーシャを守るべき仲間と見立てて魔物と戦ったりとかしてたな〜)
そんなことを思いながら落ち込んでいるサーシャを励ました。
「まあそんなに落ち込むな。今からでも食べてやるから」
「ホント!? 私、アッシュくんのために頑張って作ったんだよ!!」
「そうかそうか。で、このことは母さんには伝えてあるのか?」
「もちろんだよ。なんてったって今日はアッシュくんの10歳の誕生日だよ!! だから、アッシュくんには秘密にしてたんだよ!!」
「え、まじ? そういえば今日って俺の誕生日だった……。父さんは覚えてた?」
「いや、ごめん。完全に忘れてた……」
子は親に似るとはまさにこのことで、親子揃って今日が俺の誕生日であることを忘れていた。
しかし、父さんは忘れていた一方で、きっと母さんは俺が自分の誕生日のことを忘れてると思った上で俺のことを驚かせるために、あえて今日が俺の誕生日だってことを言わなかったんだろう。
「お父さんは家に帰った方がいいかな?」
「安心してください。ちゃんとアッシュくんのお父さんの分もありますよ」
「おお、それはありがたい」
「それじゃ、食べるとしますか」
母さんも知ってたってことは何か1人で食べてるのだろうと思い、俺と父さんはサーシャが作った昼ごはんを食べ始めた。
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こんな幼馴染、自分にも欲しかったな……
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