元勇者、学園を目指す
第5話 そして500年後
「うわあああアアアッ!!」
俺はベットから飛び起きた。
そして目を開いてから見えたのはいつも通りの自分の部屋だった。
(ハァ…ハァ…! 夢か……!!)
「アッシュ? どうしたのいきなりそんな大きな声を上げて」
「母さん……。ううん、なんでもないいよ」
「そう? じゃあ早く起きて、朝ごはん食べちゃいなさい」
「わかった」
そうして俺は母さんに促されるままにベットを出て、朝食を食べに台所へと向かった。
※
俺はかつて、あいつ……アレクに殺された。
『ざまぁ』
そう言われるのと同時に目の前が真っ暗になり、俺は意識を失った。
そして長い眠りから醒まされるような感覚があり、次に意識が戻った時に目の前にあったのは、父さんと母さんの顔だった。
「無事に生まれてきてくれて本当に良かった」
「ふふ、そうね」
どうやら俺は前世の記憶を引き継いでまま転生したらしい。
(できればあんなクソみたいな前世のことなんて忘れてしまいたかった……)
こうして俺は“アッシュ”と名付けられ、2人の息子として育てられることになった。
転生した俺がまず初めにしたことは自分の前世と向き合うことだった。
忘れたいと思っても忘れられず、変えられない過去と向き合おうとするのはとても辛かった。
しかし、幸いにも乳幼児の頃は意識はしっかりしていても体が思うように動かず、時間はだけはたっぷりあったのでゆっくりと考えることができた。
最初のうちは、
(どれもこれも全部あいつのせいだ! あいつさえいなければ、あいつさえ生まれてこなければ! てか、少しでも練習すれば成果が出てたのあいつのせいじゃん! あいつが俺にバフなんかかけなければ俺は調子に乗らなかったのに!)
ある時は、
(確かに俺も悪かった。確かにあいつがバフをかけたのも“どんな時”でも俺を支えるっていうあいつなりの意思の表れだったのかもしれない。それを勘違いして調子に乗った俺はバカだったかもしれない。それでも、どうしてそれのことを俺に教えてくれなかったんだよ。どうして止めてくれなかったんだよ)
またある時は、
(……結局は俺が悪いのか。あいつが俺にバフをかけてることを教えたら、俺はあいつを道具としか見なくなるだろう。仲間であることをこだわるあいつにとっては隠しておきたいことだったんだろうな。止めてくれようとしたところで俺は勇者だって調子にって見下してたから、話も聞かなかっただろう。結局はあいつがいなくても調子に乗ってただろうな)
そして最終的に、
(クズだった俺のことを最後まで仲間だって思ってくれてたあいつを裏切った俺が悪いんだ。あいつは俺が仲間だって思ってくれていると信じていたのに……)
過去と向き合ったことで俺は「仲間の大切さ」を学んだ。
もし俺があいつのことを対等な存在だと考えて、あいつのことを信頼していたら……
きっと調子に乗ることもなかっただろうし、魔王討伐も出来ていただろう。
だから俺は決心した。
(もう二度と仲間を見捨てない。これからは仲間と支え合って生きていくんだ)
そして今に至る。
台所に着くとそこには既に父さんが座っていた。
「おはよう、アッシュ。いきなり大きな声が聞こえたけど大丈夫かい?」
「ああ、大丈夫。ちょっと怖い夢を見ただけだから」
「それじゃあ今日も畑作業を手伝ってもらっていいか?」
「もちろん」
————————————————————
物語が始まるまでが長かった……
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