第4話 『ざまぁ』
「やっぱり来たね……」
隣町へ行く途中にあいつは待ち構えていた。
「アレクさんの言った通りになりましたね!」
「ホントよ! なんであんた、あいつが来ることがわかってたのよ!」
「それは簡単さ。ここに僕たちがいるっていう情報を流したのは僕だからね」
どうやら俺は待ち伏せされていたようだ。
そんなことより……
「おい、アレク! 早く俺にかけたデバフを解け!」
「驚いた! 君は僕の名前を知っていたんだね。いつも、“あいつ”とか“こいつ”とか呼ばれてるから知らないと思ってたよ」
「そんなことはどうでもいい! 早くデバフを解け!」
「それじゃあ率直に言おう。僕は君にデバフをかけたことはない」
「……は? う、嘘だ! そんなの絶対に嘘だ! じゃあお前、突然俺が弱くなったことをどう説明するんだ!」
「それは君の元々の実力だよ」
「だからそれは一体どういうことだ!」
「簡単さ。僕のスキルの名前は《バフ・デバフ》。バフとデバフを一気に担える大変珍しいスキルさ。確かに君が言うように僕は君にデバフをかけることができるよ。でもこのスキルにも条件があってさ、1人の対象にしかかけることができないんだよ。で、今は僕自身をバフしてるところだよ」
「だから何が言いたい!」
「まだわからないのかい? 僕は昨日君のパーティを抜けただろう? そこで初めて僕は君に7年間かけ続けてきたバフを切ったんだよ」
「な……」
(バフならかけられた瞬間に自分の能力が上がっているのを感じるはずだ。そのことに関しては……確かに心当たりがないわけじゃない。でも、あれは……あの時の全能感は!)
「思い出したかい? そうさ、君も覚えているだろう? あの時からずっとだよ。そう、君が王様から聖剣を受け取ったあの時からね!」
確かに俺は聖剣を受け取った時に自分の能力が向上しているのを感じた。
でも実はあれはこいつのバフがかかったていう合図で、聖剣は勇者の能力を一段階上げるっていうのは……多分使い手によって切れ味が変わることをいっていたんだろう。
「……お前が俺にバフをかけていたのはわかった。それじゃあ、なんでお前は俺に気づかれないようにバフをかけ、それを7年間も続けていたんだ!」
「仲間だと思ってたからだよ……君が聖剣をもらったのと同時に僕も誓ったじゃないか。君のことをいついかなる時も支えるって。だから僕は君にバフをかけ続けるのをやめなっかった。そして、そんなことを知らない君だからこそ僕のことをパーティから追放してくれた」
「…………」
「僕は君が僕のことをパーティから追放しない限りは仲間だって思うことにしてたし、戦闘では役に立てないからって、それ以外のところでも役に立とうと頑張った。それでも僕は君に追放された。君にとって僕は仲間じゃなかったんだと悲しく思う反面、正直嬉しかったよ。これでようやく君みたいなクソ野郎の下から解放されるって」
「…………」
※
「そういえば僕がわざわざ君を待ち伏せしてた理由っていったけ?」
「ううん、きっとまだ言ってないよね」
「簡潔に言うと君から解放された僕は今日一日、力のないクソ野郎となった君のことを見守っていました」
「そしたら酷いこと、酷いこと。聖剣を投げ捨てるわ、自分で呼んだゴブリンを人になすりつけるわ、僕のことを逆恨みして殺そうとするわ」
俺は道中で買った鉄製の剣であいつのことを刺そうとしたが、回収して来たであろう聖剣によって防がれた。
「壊れないってのはいいね。僕が使っても、なまくらにしかならないけど、君を殺すものとしては丁度いいかな?」
「ヒイッ!」
あいつの剣が俺へと迫る。
俺は咄嗟に後ろに倒れ込んだことで剣を避けることはできたものの遂に逃げ場を失った。
(どうしてこうなった。こんな筈じゃなかったのに!)
「最後に何か言いたいことはあるかい?」
「ま、魔王はどうする? あいつは勇者である俺以外じゃ倒せないんだぞ!」
「あ〜そのことね。それについては僕たちで戦ってみて、ダメだったら僕のデバフをかけた状態でセレスの封印魔法をかけたりしてなんとかしてみるよ。で、遺言はそれだけかい?」
「い、嫌だ。死にたくない。セレス、ナミア助けてくれ」
「…………」 「…………」
「それじゃあ、僕から君に送る最後の言葉はこれにしよう」
『ざまぁ』
そう言われるのと同時に俺の視界は真っ暗になり、意識が覚醒した。
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ようやくプロローグが終わったぞー
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