第3話 没落
1人になった俺は憂さ晴らしをするために魔の森へとやってきた。
(今日は弱い魔物でも狩るか……)
そう思った俺は背中にあるカバンの中からゴブリン達が好む匂いを放つお香を取り出し、炎魔法で火をつけた。
本来王国ではこのような魔物を引き寄せるアイテムの使用は禁止されているが、俺はギャンブルで負けた時のストレス発散用として定期的に闇市で購入しており、王国側もそれを黙認していた。
(お、きたきた)
しばらく待っているとお香の周りにたくさんのゴブリンが集まって来た。
魔の森に魔王がいる影響で2、3匹ゴブリンの進化先であるホブゴブリンが混ざっていたが特に気にするようなことでもなかった。
(じゃあ、そろそろ燃やしますか)
「“インフェルノ”」
そう口にした瞬間、俺の手のひらから出てきた特大級の火の玉がゴブリン達を燃やし尽くす…………ことはなかった
俺の手のひらから出てきた小さな火の玉はゴブリン1体の頬を掠め、空中で消え去った。
それと同時に30体以上のゴブリン達が一斉にこちらを向いた。
(な、なぜだ! 今までは成功していたはずなのに……)
俺は何が起きたか理解できず、無意識で今度は違う魔法を唱えていた。
「ラ、“ライトニング”」
そうすると俺の手のひらから放たれた静電気ほどの雷が『バチッ』という音を立てて、ゴブリン達に届く前に空中で霧散した。
それを見たゴブリン達は獲物を見つけたと言わんばかりにこちらに向かって殺到して来た。
俺は急いで聖剣を鞘から抜き前に構え、ゴブリン達を迎撃をした。
(き、切れない)
ホブゴブリンの棍棒を聖剣で受け止めるが棍棒は切れることなく、ホブゴブリンに力負けした俺は後ろに吹っ飛ばされた。
聖剣は勇者自身の実力によって切れ味が変わる特殊な剣だ。
力ある勇者が使うとこの世界で最高の高度を誇るアダマンタイトすらも両断する。
しかし、逆に力がない勇者や勇者以外が使えば壊れないだけのなまくらになる。
勇者であるにも関わらず、初級の冒険者でもかてるホブゴブリンの棍棒すらも切れないということは、それすらの実力もないということだ。
俺は重いだけのなまくらと化した聖剣をゴブリン達に投げつけ全力で街の方に向かって走った。
途中追いかけてくるゴブリンを偶然そこいた冒険者になすりつけ、命からがら街まで逃げてきた。
(どうして! どうして俺はこんなに弱くなっているんだ!)
昨日まで出来ていたことがいきなり出来なくなった。
その理由を考えていくうちに俺はある一つの結論に辿り着いた。
「あいつだ……」
(確かあいつは特別なスキルを持っていたからこそ勇者パーティに入っていたはずだ。結局、興味がなくて一度もその効果を聞いたことはないが、そのスキルがきっと対象にデバフ効果を与え続けるものに違いない)
そう決めつけた俺はあいつの居場所を探し始めた。
するとすぐに、あいつはセレスとナミアと共に隣町の方に拠点を移したらしいという情報を手に入れることができた。
(待ってろよ! お前を殺してでも絶対にデバフを解かせてやる!)
俺は急いで隣町に向かった。
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あと1話では足りなかったみたいです……
あと、タイトルが変わった経緯については、近況ノートに書かれています。
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