第9話 壊れゆく平穏

 マナ「すいません、パーティ行けなくなりました。」


 ソウタ「そんな、またどうして!?」


 マナ「国が私を呼び出したんです。なのでごめんなさい。」


 そう言うとマナさんは走り去ってしまった。

 ちょっとショックだな、でもわざわざ話してくれたってことは何か理由があるはずだ。

 そして俺は集落の人たちに話を聞いて回った。

 師匠にも相談すると。


 オルキス「とうとう呼び出したか。」


 ソウタ「呼び出した?」


 オルキス「お前は知らなかったんだな、いい機会だ教えよう。マナは人魚の国オーシャルのお姫様なんだよ。」


 マナさんがお姫様!?予想にもしなかったが、納得はいく、寿司を食べたあの日のマナさんはどこか疲れていた。


 ソウタ「でも何で、マナさんはこの集落に?王族ならお城とかに住んでるんじゃ…」


 オルキス「彼女は家出したんだよ。ソウタ、マナの魔法すごいと思ったか?」


 ソウタ「思いました。一度一緒にゴブリンと戦ったことがあるけど、適性属性だったから殆ど無詠唱で氷結弾アイス・ショットを連発していて何なら威力も高かった。」


 オルキス「そう、マナは魔法を扱うことに非常に長けている。更にで言えばお前が自分の適性を知りに来た時、マナは嘘をついていた。」


 ソウタ「嘘?」


 オルキス「彼女は、ある保有能力を持っている。」


 ソウタ「それは?」


 オルキス「魔導同調マジック・シンクロ、基本魔法を使う時それと同じ適性属性に変わり、魔法使用時、強力になる代わりに自身の肉体にダメージが入る。強力かつ危険な能力だ。更に彼女、それを制御できてない。」


 ソウタ「でもなぜ、呼び出したんだ。」


 オルキス「わからんが、兵器が完成したんだろう、彼女の魔導同調マジック・シンクロを使った兵器が。」


 ソウタ「兵器だって!?首謀者は?」


 オルキス「わからん、しかし数年前に兵器開発に携わった研究者は既に牢に入っている。兵器の開発もストップしていたはずだ。でもなぜ今更になってマナを呼んだのだ?両親自らもそんな作をする者ではない。なんなら家出したことに深く反省しておった。」


 ソウタ「わかりました、俺、マナさんのところに行ってきます!」


 オルキス「わかった。気をつけて行ってくるんだぞ。精々マナにカッコ悪いとこ見せんなよ。」


 ソウタ「わかってます!」

 

 そのころオーシャルでは、牢屋で王と一人の男が話していた。


 王「これでいいんだな。」


 ???「えぇ、そうすれば貴方達家族と国民は助けてあげましょう。」


 王「この外道め!お前の目的は何だ!」


 ???「これも…全てあの方のためです。私たちの悲願。」


 そう言うと男は立ち去り、牢の鍵を閉める。

 人魚の国オーシャルは、今破滅に向かおうとしていた。ある者たちの目的のために。

 



 一時間ほど馬車に揺られてオーシャルに着いた。

 ここがマナさんの故郷オーシャル、マナさん待っててくれすぐに探し出す!


 宿屋にチェックインして俺は聞き込みを開始した、この国のこと、マナさんのことを至る所で聞き回った、だが情報はなかった。


 全然ダメだあ、お姫様ということもあって情報とかたくさん出てると思ったけど、そういえば家出してたんだもんなあ、そりゃ情報も出ませんわ。


 城下町にある、飯屋で昼食を食っているとある噂が耳に入ってきた。


 「聞いたか?王が変わったて話?」


 「聞いたよ、見た目とかは普段の王様と変わらないけど、中身がいつもとちょっと違うって臣下の方で話題になってた。」


 「何があったんだ?」


 「噂によると昨日くらいに1人の女が城に入っていったらしいぜ。それがバチクソ可愛いらしいんだよ。」


 「もしかして、浮気とかか?ハッハッハ」


 「違いねえや、アッハッハ。」


 ソウタ「その話詳しく聞かせてくれ!」


 俺はすぐさま駆け寄り話の出処を聞く。


 新たにわかった情報として王が数週間前病に倒れたそうでそこから王は変わっていったらしい。更に近頃海の魔物が荒れ狂っているとのこと。


 だが情報を手にしたとしても、早速行動が出来るという訳ではない。マナさんが向かったであろうお城には兵士だっている。ルートもまだ確保できていない。正面からカチコミ入れても、返り討ちに合って最悪死ぬ可能性もある、どうすればいい。

 そうして1日が過ぎて行った。

 

 オーシャル王宮内

 マナは一人王と話をしていた。


 マナ「父上、何で今となって呼び出したの?」


 王「お前の力が必要なんだ、マナ。お前の魔導同調マジック・シンクロがあれば厄災に対抗できる兵器ができる。お前だけが頼りなんだ。」


 マナ「厄災に対抗するために協力するのは分かるけど、何で今更私を呼び出すの!」


 王「仕方がないことなのだ、厄災が復活すればこの国は真っ先に狙われるだろうよ。この国の初代国王にして水魔王オーシャルは厄災戦時にレオ=モードリスと並ぶほどに活躍を見せた。その血を色濃く引き継ぐお前なら、厄災に対抗できるやもしれん!」


 マナ「わかったわ、世界を守るためだもんね。私、頑張る。で、私は何をすればいいの?」


 王「ありがとう私の娘よ、何をすればいいんだったな、それは……こういうことですよ。」


 と王が言うとマナが激しい頭痛に襲われる。


 マナ「うっ……頭が……痛…い…!」


 そしてその場に倒れ込み、マナの意識は崩れゆく。


 王?「フ…フハハハハハ!ようやく、聞き始めましたか。人間と違ってやはり時間がかかりますね、人魚らは。」


 マナ「貴方は……一体……何をしようとしてるの?」


 王?「おやおやおや、意識が残ってたのですか、冥土の土産として教えてあげましょう私たちは……ちっ、うるさいですね、わかりましたよ。貴方達、彼女を研究室にご案内してあげなさい。」


 彼女を連れ男は研究室に入って行く、王の姿に化けながら臣下を従えて。


 オーシャル2日目

 宿屋から出て今日も情報を集めをする。昨日の夜、師匠にカードで連絡し来てもらった。王様とは面識があるので、その付き添いとしてお城に入る作戦だ。だがそれでも確実な情報がない限り動くことはできない。


 オルキス「この城下町に王宮内で働いる知り合いが居てね、そいつに話を聞くとしよう。」


 城下町の路地裏を待ち合わせ場所に指定し、知り合いに話を聞いた。


 「町でも噂になってるが、王は変わった。数週間前に王は酷い頭痛を訴えてしばらく寝込んでいた、そこで優れた僧侶を呼んだ。僧侶に診てもらい、王の頭痛は日に日に良くなって行ったが、良くなるに連れて王は変わっていった。新兵器の開発を始めさせた。」


 ソウタ「新兵器……」


 「ああ…魔導兵器ってものの開発を急がせた、研究班の奴らに聞いた話によると、使うには人を直接兵器の回路に使って動かすんだそうだ。」


 ソウタ「それでマナさんを………」


 オルキス「急いだほうが良さそうだな。」


 ソウタ「はい……!情報提供ありがとう。」


 これで噂が真実だと確信した。

 待っていてくれ、マナさん!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る