第7話 対決!厄災?

 フィン「模擬戦始めッ!」


 私は構え、フィンに向かって飛びかかる。


 ナデシコ「ハァーーー!」


 あの日から約4年が経過した。異世界転移をして右も左もわからなかった自分はとうに消え失せている。

 フィンによる数々の厳しい特訓、最初はバテてばかりだった、でも少しづつ着実にフィンの実力に近付きずつあった。

 そして今日は模擬戦の日、4年分の成果をフィンに叩きつける日であり、それの真っ最中であった。


 ナデシコ「ハァッ!」


 私は両腕に装備した盾二刀流スタイル、一方フィンは片手剣+盾のスタンダードな装備である。

 互いに全力を尽くしての模擬戦。


 私はあの日と同じく盾と共に連続でパンチをフィンに当てる、だがそれだけじゃない。

 3年前、模擬戦終わりにラスに声を掛けられた。


 ラス「よく頑張りましたね、私から一つ提案がありますが聞きますかな?貴方にとって結構有益なものですが。」


 ナデシコ「聞かせてください!」


 ラス「私のもとでも修行をしてみませんか?」


 ナデシコ「修行というと?」


 ラス「魔法拳です。」


 ナデシコ「魔法…けん…?」


 ラス「体内のMPを効率よく練り、操り、身体を強化しつつ、最後にとっておきの一撃を叩き込む拳です。」


 ナデシコ「モンクの人と噂程度に聞いたくらいなんですけど何でラスさんがそのことを?」


 ラス「魔法拳の師範、実は…私なんです。」


 ナデシコ「ええ!?」


 それから私はラスさんのもとで魔法拳の修行に入り今に至る。


 魔法拳

 じょから始まり、ほんに流れ、けつに終わるのが魔法拳。

 魔法は"本"から"結"と"序"がなく、魔法に当たる詠唱は"本"、"結"は魔法の詠唱が完了し発射したものを指す。魔法拳における"序"は構え、"本"は繋ぎ、"結"は放出である。

 攻撃方法の解説としては"序"の"構え"から始まり、"結"に至るまでの溜めの間を"本"によるサポートと他の武術などと組み合わせ"結"による体内に溜めたMPを純粋なエネルギーとして解き放つ


 序型-構え

 魔法拳の構えはMPを内に留める技術であり、最大MPが50%上がる最初の型。MPを自身の体内に溜め、循環させ肉体を内側から強化する。強化された肉体は、皮膚から内臓に至るまで全て"結"に至るまで自動的に強化され続ける。修行を重ねる毎に強化の度合いが変化する。


 本型-還元

 攻撃を行う、行われ肉体へダメージが発生した時、ダメージの半分をMPに還元する。


 本型-城壁

 攻撃を受ける際、体内のMPを一定の場所に集中させ、一時的に防御力を強化する。


 本型-俊撃

 体内のMPを一時的に放出し、俊敏を上昇させ殴打する。


 本型-奮撃

 体内のMPを攻撃を行う場所に集中し筋力を上昇させ、連続で拳を畳み込む


 本型-発撃

 攻撃を受けた時、還元するMPをそのまま相手にダメージとして跳ね返す。


 結型-放出

 "序"、"本"型によって、体内に溜められたMPを純粋な形で、相手に向け放出する。"序"から"結"に至るまでの時間や溜められたMPの総量によって威力が変化する。


 先ほどのパンチの後、私はラスさんから教えてもらった魔法拳の1つ俊撃による"体内のMPの一時的な放出"使ってフィンを上空に殴り飛ばす。


 フィン「ぐはっ!…驚いたな、数年前から動きが少しずつ動きが変わっていたなと思ったら、ラスさんの魔法拳じゃないか!私以外の所でも修行をしていたとは、感心感心!だがッ!」


 そう言うと吹き飛ばされているフィンは風魔法により空中で静止する。

 止まったかと思うとすぐさま一直線に上空から私のところに突撃をしてくる。


 フィン「衝撃猛斬インパクト・ブレードッ!!!」


 通常の衝撃猛斬インパクト・ブレードは剣に風魔法による風圧を付与した後、剣による突撃を仕掛ける魔法剣の一種であるが、上空からのそれは、自由落下と風魔法の補助により、凄まじいパワーとスピードでこちらに向かってくる。

 上空から放たれたそれは育成場の戦闘フィールドの地面を軽く抉り、亀裂が走る。使用者に極大な落下による負担を与えながら。

 しかし……フィンはその場に佇んでいた。

 風魔法により自身に掛かる負担を抑え込んでいた。


 ナデシコ「やばすぎ……」


 と思わず口を出しつつまた構えに入り、次の一手を考えつつフィンに接近、飛び蹴りを放つ。


 フィン「やっちまったな。」

 

 とその後の処理をどうするかとノリ乗ってやってしまったとフィンは後悔し私の蹴りを受ける。

 その後に私たちは激しい攻防を繰り広げる、そこに私は勝機を見出すまで。


 どうするかなあ、さっき俊撃をしたから体に残ってるMPは5割を切っている、まだ私が使えるのは、"構え"、"俊撃"、"還元"、"放出"の四つ。私のMPは"構え"の状態でも精々最大150MPくらい、この世界自身のHPが1割切ると気絶する。フィンを負かすとなるとあと100MPは欲しい、どうする……?

 私はフィンを見つめ攻防をしながら考える。

 その時、私はフィンの現状の弱点を見つけた。

 腕だ!そう思った。

 フィンが空中からの衝撃猛斬インパクト・ブレードを放って風魔法により自身の負担を軽くした、だがそれにも欠点があった、剣を持っていた方の腕が腫れ上がっている。

 考えてみれば先程から剣による斬撃に力が入っていない。

フィンの回復魔法でも回復に時間が掛かっている様子。

 私は"還元"を発動しながら果敢に攻める。

 そして……MP150 MAX!

 溜まったッ!


 ナデシコ「いっけェーーーー!!!」


 溜めたMPを"放出"する。その放出によるエネルギー砲はフィンの盾をも貫通し、ダメージを与え、フィンを軽々と吹き飛ばしてみせた。


 フィン「負けだよ、俺の負けだぁ!ナデシコ四年間お疲れ様!そしておめでとう!」


 ぶっ倒れたフィンが何とも悔しそうでうれしそうな表情で言う。四年間の王国での修行生活それがようやく報わられたそう思った。


 ナデシコ「ありがとうございます!!」


 私は思っ切りお辞儀をした。

 あたり一面から称賛の声が湧き上がる。模擬戦に集中したていたから気づかなかったがいつの間にかギャラリーが出来上がっていたらしい。

 その後、私はラスさんとフィンさん多くの兵士たちと打ち上げを行った。


 翌日

 私はフィンが言っていたご褒美を貰いに王宮に出向いていた。


 デトリア王「話は聞いておるぞ、フィンに勝利したそうだな、よくやった。」


 ナデシコ「ありがとうございます。」


 デトリア王「では言っておいた褒美をお主に渡そう!英雄の武具レジェンドの武器レギオンディバイダーを!」


 英雄の武具レジェンド聞いたことがある、古から伝わる英雄たちの武具だったかな、そんなものを貰えるとは。


 デトリア王「その武器は厄災を討伐した者が使っていたものだ、我が国で研究を続けた結果、厄災に対して少しながら反応があった。厄災が現れた時出なくとも大いに役立つ、少し付けてみなさい。」


 レギオンディバイダーを両腕に装備し色々と動いてみる。


 デトリア王「使用者の戦闘スタイルに合わせて形状が変化するようにできている事が判明しておる。いつもの感じで構えてみなさい。」


 構えると、それまでただのブレスレット程度の大きさだったディバイダーが青く発光し私の両腕に青く半透明の盾を浮き出させる。


 本当だ!すごーい!テンション上がるなあ!剣とかもできるのかなあ?


 剣盾剣盾と瞬時に切り替えることもできた、マルチウェポンの領域を優に超えている、さすが対厄災武器!


 デトリア王「お主もそれを試したかろう、それついでに国周辺の調査に出て欲しい。」


 ナデシコ「調査というと?」


 デトリア王「最近残留思念の影響か、魔物の行動が活発化しているというのは知っておるな。」


 ナデシコ「はい。」


 デトリア王「その魔物たちの討伐を頼みたい。」


 ナデシコ「わかりました。」


 デトリア王「よろしく頼む。」


 王様から依頼を頼まれ私は早速荷物を揃え周辺地域の調査を開始した。

 ゴブリン、オーク、スライムと結構な数の魔物が活発に活動していた、更にはそいつらの変異種らしきものまで確認できた。見つける次第にぶっ倒していったらディバイダーの宝石部分が少し赤く光っていた、あの変異種は厄災に関係があるのか?と考えつつ次の場所コール村へと向かう。

 コール村の人によると、近頃採掘場にて1人発狂死した人がいたという。

 私はさっそく採掘場に向かう、採掘場はその発狂死をした人のことを怖がり、採掘作業は一週間以上中止されているとのことだったので、村長に調査をしに来たと報告し向かった。


 採掘場1F

 とくに発狂死に関係するようなものは発見はできなかった、別の入り口から魔物が入り込んでいるぐらいで、そう大したことはなかった。

 魔物を倒しつつ2Fへと進む。


 採掘場2F

 2Fに入った途端頭が痛くなる。

 い、痛い、発狂死の正体はこれか?原因を探さないと。

 奥に進むにつれて頭痛が激しくなる一方、ディバイダーが赤く光り輝く。


 もしかして厄災が絡んでる!?


 そして私が採掘場の1番深くまで来た時、発狂死をもたらした原因を目の当たりにする。

 それは黒い霧、だがそれが集まり無数の目と触手を持つ化け物に姿を変えた。

 化け物が襲いかかってくる。

 気持ちわるっ!と内心叫びつつ私は"構え"る。

 見たところ口や耳は無し、話し合いもできなさそう。

 とりあえず殴ってみる。


 ナデシコ「たぁっ!」


 化け物は私の攻撃に合わせて触手で私の腕を絡みとる。 

 しまった!還元ッ!

 その瞬間ディバイダーが光り、化け物の触手が崩壊する。

 そうだディバイダーのこと忘れてた。対厄災武器なんだから最初から使えばよかった。

 化け物を見るとディバイダーを恐れている感じがした。

 てことは化け物あいつが厄災?

 私は再度化け物に対して攻撃する。

 さっき絡め取られかけときの還元でMPは十分。

 厄災を殲滅する、そんな気持ちで私はディバイダーに大砲を意識する、放出の威力を最大限に引き出すために。

 ディバイダーが両手を合わせた時砲身になるような形に変形する。両手を合わせMPを集中させる。


 ナデシコ「対厄災式魔力砲レギオンバーストッ!」


 放出によって放たれる純粋なエネルギーがディバイダーの光に包まれ化け物の体を貫く。

 化け物の体は解けるように崩れて消滅した。

 はぁ…はぁ…何だったんだ。でも明らかにただの化け物じゃなかった、ディバイダーが反応してたしやっぱり厄災だったのかな?とりあえずは被害者が少ないうちに討伐しておいてよかった。

 私は王国へと帰還しこの件について王に話した。


 デトリア王「厄災復活の兆しと共に現れた霧の化け物か…研究班にはコール村で調査させよう。此度の任務ご苦労出会った。今日のようなことがいつ何時起こるかわからん、十分に英気を養いたまえ。」


 こうして私は厄災の化け物退治を行いつつ異世界を楽しむのであった。

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