過去へのタイムトラベル
第10話 決別の日からのリスタート(880文字)
……最近の出来事を思い出して今の状況になったと考えられる原因は一つしかない。ギャンブルの神様が俺を過去に戻した。人外の力なしではあり得ないことだ。
神様は何故平凡な俺を過去に戻すという摩訶不思議なことをした? 特別な事は何もしていな……したな。
あの日、貞松将悟や緑川京一と話をした日。競艇場からの帰りにギャンブルの神様の神社に寄った。そこで宇華を救いたいと願い賽銭をした。その日、俺は万舟券を当てた。そして金額を全て賽銭箱に入れた。一緒にいた日高一誠は俺の行動に驚いていた。
かなりの額だったので神様も願いを聞いてくれたのか?
だがしかし。ここは本当に過去なのか? もしかしたらまったく違う世界という可能性もある。もしくは今から二十八歳までの未来が夢で、今が本来の俺なのかもしれない。
……
……
……やめた。考えるのをやめよう。こんな非現実的な出来事を足りない頭で考えても答えは出ない。
それよりもこれからのことを考えた方が有意義だ。
部屋のベッドの近くに置いている目覚まし時計はデジタル。時刻以外にも温度や日付けが表示されているが年号はない。この部屋に壁掛けカレンダーはない。
デジタル時計では今日は六月の最後の日曜日。金髪頭の今の俺が中学二年生なら、この日は幼馴染の宇華と決別をした日。この日からのリスタートというのは神様も粋なことをする。
さて、時計を再確認。今は朝の六時半。宇華が俺に別れを言いにこの家に来るのは朝の八時。まだ時間はある。とりあえず腹が減っているので台所に行こう。この時間は母親が起きて朝食の準備をしているはず。今が何年なのかも母親に聞こう。
この過去では俺が未来から来たとは言わない方がいいだろう。頭がおかしな人間と思われる……まぁ、中学の頃の俺はかなり頭がおかしなヤツなのだが。
「俺が——」
ん? あれ? 『未来から来た』と言えない。声が出せない。これは良い。うっかり言う可能性がある。それを防止できる。神様に感謝だな。過去に戻してさらに俺のミスしそうなことを事前に止めてくれる。
よし、さっそく部屋から出て台所へ行こう。腹が減ってはまともな判断もできないからな。
救済のタイムトラベル さとうはるき @satou-haruki
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