第4話 サービスサービス(2,624文字)

 幼馴染の宇華がなぜココで働いているのか……?


 同窓会で再会した時、貞松将悟と結婚している事を知った。幸せに暮らしていると思っていた。


 俺の中でいろいろな疑問が浮かび上がる。


「なぁ、宇華。貞松将悟とは本当に結婚しているのか? 二人は夫婦なのか?」


「うん……ちゃんと籍は入れてる……。将悟さんと私は夫婦だよ……」


 将悟さん……? 同級生なのに何故『さん』付け……何故なんだ?


 俺と宇華は立ったまま向き合い会話をしている。目の前にいる宇華は視線を逸らし俺を見ようとはしない。


「宇華は何故ココで働いているんだ? いつから働いている? 今は東京に住んでいるんじゃないのか? 将悟の仕事の経営コンサルタントは儲かっているんじゃないのか?」


「ユウちゃん、質問が多いよ……」


「あ、悪い。気になる事が多くて。えっと……とりあえず、一旦座らないか?」


 宇華と十数年ぶりの会話。もっと緊張すると思っていた。だけど状況が特殊すぎるのか、俺は緊張や遠慮する気持ちは全くなく普通に喋っていた。


 俺の提案に宇華は素直に従う。俺達はベッドに並んで座った。宇華は視線を逸らしたまま目を合わせようとしない。


「宇華、何故ココで働いているんだ? いや、働いている事は悪い訳ではなく、むしろ、宇華が相手で嬉しいと言うか……じゃなくて、違うぞ。うん。久しぶりに会話が出来るのが嬉しいのであってだな、決していやらしい気持ちではないぞ」


 宇華は沈黙している。どうやら俺は宇華との久しぶりの会話にテンパっていたようだ。


「……プッ。ココに来ているのに、いやらしい気持ちが無いのは嘘だよね。焦りすぎだよ」


 俺が焦って誤解を解いているのが余程面白かったのか、宇華はこちらに顔を向け俺と目を合わせた。


「もしかして……ユウちゃん、こういう所は初めて来るの? もしかして……未経験なの?」


「高級店は初めてだけど、こういう店に行くのは何度もある、だから未経験ではない。未経験ではないけど俺は素人童……って、何言わせるんだよっ。俺の事はいいだろ。宇華の事を教えてくれないか」


「もう、ユウちゃん焦りすぎだよ。かわいい。ユウちゃんは今の方が素敵だよ。昔は鋭い目つきときつい性格だったのにね」


「……そうだな、あの頃の俺は全ての事にイライラしていた。宇華にもキツく当たっていたな。悪かった」


「いいよ。私たち幼馴染じゃない。あの頃は親の指示に従い、ユウちゃんと縁を切るしか選択肢はなかった。今はこうして近くで話ができるのは嬉しいよ」


 宇華は穏やかな表情で話をしている。宇華も子供の頃と同じように気を遣わず、話が出来ている。


「宇華、改めて聞いてもいいか? 何故ココで働いているんだ?」


「それはね——」


 宇華は自身の現状を話してくれた。


 中学の卒業式の日に同級生の貞松将悟に告白され付き合い始めた。二人は同じ高校、大学へと進学。そして大学を卒業後すぐに結婚。大学卒業後、会社勤めだった貞松将悟は二年前に会社を辞め、独立して経営コンサルタント事業を始める。


 貞松将悟の事業はうまくいってたが、半年前に取引先の企業に損害を与え、賠償金を支払う事になる。その賠償金返済をする為、宇華は現在風俗で働いている。


 賠償金用の保険があるらしいが、開業してから上手くいっていた貞松将悟は経費削減の為、保険に入っていなかったらしい。


「——だからね、今は夫婦で借金返済の為にがんばってるの。将悟さんは東京で働き、私はこの街でね。むこうには将悟さんの知り合いも多いから、万が一にも私が風俗で働いていると将悟さんの知り合いに知られると、将悟さんの仕事に影響が出るの。だから私は地方で働いているの。あ、離れてはいるけど将悟さんとは週一で会っているからね」


「……なるほどね。経営コンサルタントの仕事がどんな仕事か俺は分からないが、大変なんだな。夫婦で頑張っているんだな」


 借金返済で宇華が風俗で働くのは違うと言いたいが、夫婦で決めた事。俺が口を出すのは違う。


「あ、喋ってばかりで時間がなくなるね。ユウちゃん、ごめんね」


「いや、いいよ。今日は宇華と普通に話ができただけで十分さ。……ん、宇華どうした?」


 宇華が俺を見つめている。


「ユウちゃんホントに変わったね。別人みたい」


「別人ね……そうだな、俺が中学卒業を待たずに今の住所に引っ越してから、宇華と会うのは十数年ぶりだからな。その間に俺も成長したって事だよ。中学の頃は迷惑ばかりかけていたな。悪かったな」


 宇華は顔を小さく左右に振る。


「もういいよ。昔の事だしね。私はユウちゃんと再会出来て嬉しいよ」


 俺を見つめる宇華と目を合わせる。


「ユウちゃん、えっと……時間はまだあるけど……する? 高いお金を払ってるからお話だけをして、はいおしまいは嫌だよね」


「……いいのか?」


「うん。ユウちゃんが相手だとちょっと恥ずかしいけどね」


 恥ずかしそうにしている宇華を見て可愛いと思ってしまう。物心つく前から近所に住み、家族のような存在だった幼馴染の宇華に対して恋愛感情はなかった。


 久しぶりに会う幼馴染。子供の頃には分からなかった宇華の魅力に気づき心が揺れた。だけど宇華は人妻になっている。恋愛感情を抱くには遅すぎた。


「どうしたの?」


「いや……恥ずかしそうにしている宇華が可愛く思えてな」


「ユウちゃんの口から可愛いって聞けるなんて……ありがと。嬉しい」


「ところで宇華」


「何?」


「公開年齢が二十六歳になってたけど、ちとサバ読みすぎじゃないのか?」


「もうユウちゃん、雰囲気ぶち壊しだよ。空気読んでよ」


「悪い悪い。ドキドキしてさ。ちょっと恥ずかしくなってさ」


「そっか。ユウちゃんも恥ずかしくなるんだね。かわいいね。男の人って女性の年齢は若い方がいいでしょ? だからだよ」


「俺は気にならないけどな」


「ふ〜ん。じゃあどうして私を選んだの? 自分より若いからじゃないの?」


 質問された俺は宇華の胸を見た。俺の視線につられて自分の胸を見る宇華。そして俺に視線を戻した。


「なるほどね。ユウちゃんも胸の大きい方が好きなのね。男の人ってみんなそうだよね」


「い、いや、俺はどちらも好きだぞ」


「ふふっ。分かった。そう言う事にしておくね。じゃあ、胸を使ってユウちゃんに、い〜っぱいサービスするね」


「お、おう。よろしく」


 宇華は笑顔で胸を寄せる。幼馴染との性的な会話は中学の頃には考えられなかった。大人の宇華はエロくなっていた。


 俺は服を脱いでいる幼馴染の宇華を見ながら、これから始まる天国タイムに胸を膨らませていた。

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