第3話・死神

 阿修羅の一員となったスキトはシノハナから『おつかい』を頼まれたのだが内容がおつかいレベルではなかった。

 「スキト君には『死神』って呼ばれてる子を仲間に引き入れて欲しいんだぁ…頼める?」

 それを聞きゾッとしたスキト。なぜならその呼び名に心当たりがあったからだ。その男の名はツギキ。鬼首中学校2年生の不良。

 かつてその名を轟かしていた暴走族、極超の総長を下半身不随と両目失明、過度のトラウマによる精神障害で再起不能にした。もちろん警察に1回連行されたが判決は相手全員が銃器や日本刀を使用し、明確な殺意があったこととツギキが素手のみで戦っていたので正当防衛が認められたと言う。そんな伝説の存在、死神ツギキと戦えると思うと少し心が弾むスキト。

 「わかった!」

 快くその頼みを引き受けることにした。

 「ありがとう!たぶんあの子はここらへんに居ると思うから…」

 そう言いながらスマホの画面を見せてくるシノハナ。あまりにも近いためスキトはシノハナのいい匂いで頭がクラクラして少し話を聞いていなかった。

 「……ちょっと?聞いてるの?」

 突然シノハナに言われ少し焦るスキト。

 「えっ!?はい!とにかく探しています!」

 取り敢えずでその場を離れたスキト。急いでツギキを探すことにする。

 探し始めて2時間が経過した。見た目も軽く説明されており最もな特徴は手が隠れるくらい長い袖の服を常に着ていることだ。

 「どこに居るんだろ……」

 そう悩みながら歩いているとカフェに入っていく1人の少年に目が行った。

 「あっ!多分あの子だ!」

 急いでツギキの後を追うスキト。中に入りツギキに話を掛けてみる。

 (緊張するなぁ……)

 「あっ…あの…少し話があるんですが……」

 そう言われ一瞬固まるツギキ。しかしすぐに笑顔になり言った。

 「いいよ!取り敢えず横座る?」

 そう言われ横に座るスキト。スキトは混乱していた。

 (話と全然違う……身長2メートル位って言われてたのに160ちょいくらいだし顔と声女の子みたいだし……本当にツギキなのか?)

 そう思い思い切って聞いてみた。

 「あの…ツギキさんですよね?」

 「うん!」

 即答するツギキ。続けて聞いてみる。

 「あの極超を潰したって話の?」

 「え?やだなぁ!もう1年前の話だよ?」

 そう軽く言うツギキに衝撃を受けるスキト。目的を忘れかけていたが思い出してシノハナに勧誘されていることを伝える。するとツギキの表情が変わった。

 「ふーん…俺の事……利用しようって考えてる?」

 「いや…そう言うわけじゃ……」

 「じゃあ俺にメリットある?」

 そう言われ悩むスキト。考えた結果とある事を試してみた。

 「じゃあさ、俺がこのパンケーキ買ってあげるから会うだけ会ってくれない?」

 「えっ!?いいの!?……わかった!でも会うだけだよ?」

 「うん、とりあえず会ってから考えてくれたらいいからさ」

 そう言うもパンケーキしか見ていないツギキ。少しだけ可愛いなと思うスキトだった。

 「ふ〜…ごちそうさま!」

 2人で歩いているとツギキが嬉しそうに言う。そこで少し疑問を抱き始める。この子は本当に死神、ツギキなのか?そう思っていると眼の前から不良が2人向かってきた。

 「おいテメェ!何メンチ切ってんだ!?」

 「おっ…良い所に……見てて実力見せてあげる!」

 そう言うと不良たちに向かっていくツギキ。瞬きする間に2人を気絶させていた。

 「えっ……?」

 全く理解が追い付かないスキト。倒れた不良を見て笑うツギキに恐怖を覚え始めた。

 「さっ…行こうか?」

 「えっ……あっ!うん!」

 2人はシノハナの下へ急いだ。


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