無自覚な者

山口 昴sid


いや、なんでこうなっとんねん?

しばらく、仕事で学校来うへんかっただけやなのに。


謎に、天音が主役になっとた。


そんなタイプやない。そもそも、目立つのは嫌がる性格だや。

熱でおかしくなったんか? 流石にないか。

なら、あの浅川っていうやつが犯人やろ。


まあ、その原因が自分と、ヘタレな誠也やさけ、強くはいえへんが。

流されたんか?


「じゃあ、皆さん。本読みします! しっかり、声出しましょう!」


驚いていると間に、委員長の声で本読みが始まった。

俺は、天音に騙され? 惑わされている所を浅川に助けられ、恋をする?

なんやねん。これ。


「あーあ。今日も、ダメでしたか。もう、君、死んでるから言っても無駄でしたわね」


ゾワリ


あー。こいつ。

確かに、この口調、性格、祓や。


なんか、この脚本まんまやな。

才能に踊らせられとるはずやのに、余裕ぶっている、祓。

その、に惑わされとる俺。


といっても、俺は本気であって、本気とちゃうが。

まあ、もし、誠也が生贄にさせられる前に告りでもしいひんかったら、俺がもらうつもりだけどな。


ぼちぼち、番か。


「なあ、あんたは天使なのか?」


「あら。見られましたか。少し気を抜きすぎましたわ」


ここも、ほんと似ている。

思い出すのは、中2の頃。

俺が初めて、天音を祓ちゅうものを認識した時や。



真夜中に親父に起こされた。

眠さに苛立ちながら、起きたら。

悪霊が彷徨いすぎているから、手伝えと怒鳴られた。

まあ、真夜中やったから、声は小さかったかもしれんが。


その後、悪霊を潰しながら、歩いていとると、一段と強い悪霊にぶつかった。

しかもそこに、さらに来るのを感じ取った。やけど、それはすぐ霧散した。


何事って思ったのは印象にでかい。

大きいやつが自然成仏なんてないからな。


そうすると、脇道が人が出てきた。

最初は、ヤンキーとっかあっち系かと思ったが、手こずっとった悪霊がさっと霧散したことで、同職の者と分かった。


そうすると、さっきみたいなセリフを吐いた。

それが、俺と天音の出会いだ。


まあ、あの時手こずっていたせいでたまに弄られるのは、いまだに納得がいかない。



「山口君の番ですよ!」


「ごめんって。小夜さん、おおきに。おかげで〜」


あとは、真面目に読んだ。委員長を怒らせると大変やからな。




キーンコンカーコン


「さあ、終わり!姿勢、礼!」


「「「ありがとうございました」」」


はー。終わった。

天音の方に目線をやると、詰められとる。

助けてやるか。前、手伝ってくれた恩もあるしな。



「あんな上手くやって? 練習してきたのー? 馬鹿らしいね!」


わあ。最悪な現場。

こんなじゃ、霊が寄ってきてしまう。


パン


拍手を打ち、霧散させながら、上手く天音を救出。


「はあ。ありがと」


「別に。てか、大変やなー」


「ほんとだよ。なんで、あんなるのか」


そな、祓の時の天音の魅力がエグいからと言えれば楽やけど。

ほんま、誠也の霊に対する鈍感さは驚くが、天音の鈍感さも驚くもんだよ。

こないにも、良え男二人に思われてとるくせにな。

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