冗談(2)

社の前でお辞儀する。


「親神様、少しの時間失礼します」


「そんな畏まらんでも、ええのにな。まあ、そんな真面目なところがええけどな」


がちゃ


「失礼します。わあ」


綺麗。


「すごいやろ、この彫刻」


「うん」


「払い用の布団を持ってくるから、寛いとって」


「ありがと」


神社の中で、閉じ込めて神様にどうにかしてもらう時に使う布団だろう。

てか、それで寝るの? まあ、それしかないか。

柱に身を預けながら、痛みで思考回路がおかしくなっている気がする。



「起きろって」


「んー?」


「布団準備したから。こないところで寝たら、体が痛くなるで」


「ん」


いつの間にか、寝てたみたい。


「香焚いとくから、今日のダメージは減ると思うで」


「うん。何から何まで、ありがと」


「ええの。こっちが迷惑をかけたんやし。てか、誠也のことないするつもりなん?

だって、9年間やっけ?」


「8。私に決定権なんてないよ」


「ええのかよ?」


「・・・。別に・・」


「はー。あっこはおかしいわ。ほら、寝てん。寝てん。」


その話題を振ったのはそっちでしょと言いたいが、もう頭も回らない。


「うん」


落ち着いたお香の匂いに包まれて私は眠りに落ちた。

だから、「そないに鈍感で、無自覚は漫画だけやだろ」と、呟いている山口の声は届かなかった。

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