通学路

ピピピ



朝らしい。


「安鎮を得んことを、慎みて五陽霊神に願い奉る」


隈を隠して、服を着替えて下に行くと、親がいた。


「おはようございます。母様」


「ええ。おはよう。祓」


祓。

それは、払い屋としての私の名前。呪いとして、名前は有効だ。だから、本名を隠す。こういう仕事の常識だ。


カップラーメンを作って、食べる。


「どうかしら、監視は?」


「特に異常はありませんでした」


「そう。馴れ合わないように」


「はい」


「ほんとかしら? 上は貴方をずっと見ているのよ、異常を。

まあ、慣れあっても、辛くなるのは祓なのよ。どうせ、今回も捧げるもの」


カップラーメンを洗い捨てる。

分かっている。私のグループは必ず誠也を捧げるだろう。父と同じように。


「行ってきます」


「・・・」


ガチャ


「おはよ」


「おはよう」


「今日も眠そうだな。まじで寝ろよ」


「そんなに酷い?」


隈隠せてないのだろうか。


「いや、なんとなくだが? 幼馴染を舐めんな」


「はー」


「なんだよ。文句でもあるのかよ?」


「ないよ」


「適当だな! てか、まじで大丈夫か? 体調」


「大丈夫」


「ほんとかよ」


コツン


「熱はないみたいだが、、」


「平気って言っているでしょ」


誠也の胸を叩くが、びくともしない。


「帰宅部がサッカー部のエースを叩いてもな」


「心配したり、煽ったり。うるさい」


「ごめんて。けど、悪くなったら、保健室行くんだぞ?」


「はー。分かっているよ。ほんと、過保護なんだから」


「いや・・。そりゃあ」


「?」


「いや、なんでもねーよ。ほら、急がないと電車に遅れちゃうぞ」


明らかに誤魔化された。

なんだったのだろう?


その日も授業を聞いて、終わりかと思った。

最後の時間、学年集会にて最悪なことがわかった。

それは、今年の修学旅行は東北らしい。

まあ、あの地震の勉強だ。


何が最悪って?

答えは簡単、大きな災害、特に津波とか高潮に会ったところにはグロい幽霊が大量にいる。精神的に悪い。また、そこに混じっている悪霊がいる割合が多いし、強いしだ。


唯一の救いは、あそこには私の母や祖父母が応急処置程度の処置をとっていることだろう。あそこまで、大きなことがあったのに見逃すのはダメだからだ。逆に、中途半端だと手をつけていないこともある。


だとしても、全部は無理だ。

情報としても、何体か聞いている。ちょうど、冬休みに分家も含め払いのために行くとか言ってたんだ。


そこに、取り憑かれやすぎる誠也が行ってみろ、えらいことになる未来しか見えない。

ただ、修学旅行は冬休みよりも前。大人に言っても、監視する機会としか言わないだろう。何かあれば、私と改心した者達だけでの勝負になる。


ちゃんと、本調子で行かないと。


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