第11話 怖い泥沼

 現在進行形で悩んでいた。


<侍2世:.........助けて>


 数十分前、今日はユリザークを出て新天地の街に向かう為に道中を探索していたが、偶々沼があったのでもしかしたら知らないモンスターが居ると思って近いたら、


 ................あ、篠原さん落ちた。


 硬い道を選んで歩いていたが、前を進む篠原さんが偶然踏んだ場所が柔らかくて沼にハマってしまった。



 現在、


<侍2世:少しずつ下がってきたから助けて>


 現在、肩まで沼にハマっている篠原さんを見ながら救出方法を考えていたが、全然思いつかなかった。今日は視察だけだったので、クリスタルソードと防具しか持っておらず今のところ、何もできない状況だった。


<鉄人:何もできそうにない>

<侍2世:頑張って私は.......まるで銅像>

<鉄人:ならここに回復ポーションワンスタック置いとくのでここの観光大使頑張って>



 予定通り回復ポーションワンスタックを手持ちボックスから出して置いた。最近宿のボックスが逼迫していたので、都合が良かった。



<侍2世:冗談なら良いけど、本気なら明日が楽しみだね>

<鉄人:冗談に決まっていますよ、すぐ助けますから>

<侍2世:お願いね。HPが少しずつ減っているから多分この沼、毒沼だわ>


 えぇ........絶対触りたくないな。ゲーム内と言っても、汚い物に触りたくない。それに今なら逃げれそうだが、篠原さんのゲームプレイヤーは物凄く僕を睨んでいた。このキャラってエスパー付きだったけ?


 僕はファンタジアルで選べるゲームキャラクターの中で魔剣士を選んだが、篠原さんは竜戦士を選んでおり、まだ竜も仲間にしていないので、ただの人だった。


 ................はぁ、仕方ないけど助けるか、


 篠原さんの怖さと侍2世の無用性を天秤に乗せて断然怖さが重かったので、僕はクリスタルソードを持って沼に刺した。


<鉄人:これ握って>

<侍2世:でも私切れない?それに痛いし>

<鉄人:大丈夫クリスタルソードの周りに水を付着させるから多少切れるけど、大丈夫>


 魔剣士の初期スキルとして剣の周りに属性を付与でき、今回は攻撃力が小さく防御力が高い水属性を選んだ。


 ............よっこいしょ.......よっこいしょ、


<侍2世:もうちょい>

<侍2世:胸出た胸出た>

<侍2世:後は下半身........キャ>


 あの.......チャット打つ暇あなるなら片手でいいから硬い地面掴んでよ。それになんか篠原さんは楽しそうだった。



<侍2世:もう大丈夫、そっちに行くから手貸して>


 僕は手を握り、力を入れて篠原さんを抜いた。すると、


 何と篠原さんのキャラの足に何か付いていた。アレは.............ヌーマンナマズか、結構気持ち悪い。このまま篠原さんを引きずるとアレも付いて来るので、


 ...........また篠原さんは沼にハマった。


 一瞬手を離したらヌーマンナマズが勢いよく潜ってついでに篠原さんも連れていった。その時の竜騎士の顔はゲームのはずなのにリアル篠原さんが怒った様な顔だった。



<鉄人:ごめん>

<侍2世:謝るくらいならやめてよね。もう一回お願い、............>



 怖い怖い、さっきより抜けないでほしくなった。しかし、これ以上は時間が勿体無いので再度手を貸した。



 泥んこの篠原さんと宿に戻って風呂に無言で入って、風呂から出てきてからログアウトして、電話がかかってきた。


「もしもし、凛君」

「はい、そうです」

「酷いよね。私が沼にハマってピンチの時に救出以外の事を考えるなんて、それに帰る時少し距離とったよね。結構傷ついた」

「申し訳ない」


 怒涛の説教が続いたが、奇跡が起きた。朝から充電していなかったので、1時間説教をくらって説教が半分くらい終わった後に電源が切れた。充電も考えたが、.........リアル風呂に向かった。


 


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