第10話 横顔

 前は軽く頷いたが、いざ家を前にすると緊張するな、それに結構デカくない?もしかしてお金持ちか、


 ピーンポーーーン


「はぁーい、どちら様ですか?」

「篠原奏さんの知り合いの鈴木凛です」

「あらあら凛君ね、ちょっと待ってね」


 声からして貫禄が少ししたのでお母さんだろう。ドアが開くのを待っていると、足音が聞こえて、


「いらっしゃい、入って入って凛君」

「ありがとうございます、失礼します」

「うんうん」


 篠原さんを大人にして髪を伸ばした感じで凄くお綺麗だった。篠原家に入って靴を脱ぎ手を洗い、リビングにある椅子で座っていると、


「奏とは良い感じ?」

「はい、普通だと思います」

「あの子、私と違って堅物だから面倒でしょ」


(そんな事ないよね凛君)


「偶にありますね」

「そうよね」


(りりいりりりりりりいりりり凛君?そんな風に私を思っていたの)


「でも面白いので一緒に居て心地いいですよ(ゲーム内では)」

「あらあら熱いね」

「そうですか?涼しいですよ」


(こここここ心地いい!!!!私も一緒だよ。まだ現実では日が浅いけど私は.......)


「奏は凛君を待たせてもう」

「大丈夫ですよ」

「優しいのね」

「怖いんで」

「そこは私に似てるかもね」


 お母さんの言葉に少しヒヤッとした。あの恐怖を今は感じたくないので、これ以上は何も言わない。絶対に、


「それより凛君はかの」


「きき来たんだ、こっち来て」



 篠原さんにつられて階段を上がって篠原さんの部屋に入った。初めての女子の部屋だったので緊張したが、それもすぐ冷めた。


「凄いね」

「でしょ」


 ゲーム専用PCにタブレット、大型テレビと絶対に要らない冷蔵庫が中央に置いてあった。


「それよりファンタジアルしよ」

「分かった」


 僕は床に座って持ってきた小型ゴーグルを装着してログインした。宿には篠原さんも居て、チャットをしなくていいので楽だった。


「今日は前言っていたオーガ討伐しよっか」

「分かったよ、ならそうに整える」


 オーガには剣より弓の方が適している。このファンタジアルで出現するオーガは他とは違い、丸く太っており、オーガとスライムを重ねた感じだ。だから剣は通用しない。


「準備できた?」

「うん」

「私は少しまだ準備に時間がかかるからゆっくりしていて」

「了解」


 篠原さんが準備を整えるまで矢の本数などを数えていた。麻痺、爆発、毒、など色々あるが、取り敢えず全部入れた。


「できた。それじゃあ行こっか」

「うん」


 ユリザークを出て森に入った。オーガ、ファンタジアル名称で言うならオガリン、体型は可愛いが顔はオーガ、個人的に好きなモンスターでもある。


「........居ないね」

「だな」


 オガリンは発生率はそこまで悪くないが、今日は運が悪いらしい。30分程経ってようやく1匹見つけた。赤く透明なオガリンに狙いを定めて、


「.................よし」


 綺麗に入った。そしてオガリンのツノがドロップした。篠原さんも違うオガリンと戦っており、取り敢えず負けたくないので必死に弓を伸ばした。





「私はオガリンのツノ10本」

「僕は.............7本」


 負けた。てか僕が狙っていたオガリンを数匹横取りされたので、それがなかったら絶対に勝っていた。しかし、勝負に負けたのは変わらないので、僕達のルールで、


「はい、売って来てね」

「はいはい」


 モンスター買取屋に負けた方が行き、パシリに使う。これは僕達が、結成した時に決めたルールだ。




「はい......金貨10枚どうぞ」

「ありがとね」


 篠原さんにオガリンのツノを売った金貨10枚を渡して、僕はボックスの整理をまた始めた。




 篠原奏視点、


 現在、凛君はボックス整理に夢中になっている。なら私がする事は、小型ゴーグルを外して、


(................肌綺麗だな)


 凛君の横顔を近くで見ながら、ヨダレをティッシュで拭いていた。口と鼻が見えてキスの味って?と考えたが、それは凛君からして欲しいのでここでは辞めた。


(はぁはぁはぁ.......良い腕)


 動かない両手を見ながら妄想が捗った。



「篠原さん?」

「!!!!!何?」

「終わったから今日はもう終わる?」

「そうね、終わりましょうか」


 凛君は帰る準備を整えて部屋を出た。私も一緒に出て凛君が家から見えなくなるまで見送った。



「乙女ね」

「ママ、違うしそれに凛君と仲良くしすぎだよ」

「あらあら本当に私に似てるのね」

「どういう事?」


 ママは少し悩んで私に向かって質問をしてきた。それは単純でシンプルだった。


「もし凛君があなた以外の異性と今日の様な感じで遊んでいたらどうする?」

「は?」


 そんな事がもし起きたら凛君を調教するよ。私以外知らないくらいに..............するし、多分私は壊れてしまう。ママの言葉だけでも心が黒く染まりそうになった。


「一緒ね」

「私もパパが他の女と一緒に居たら理性無くすから」

「そうなんだ」


 ママは笑顔だが目だけは動かなかった。

 そんなママを見ながらこんな形もあるんだと参考にした。




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