第5話 仲間

 真正面に座っている風紀委員兼LEDさんが侍2世だと、嫌々もしかしたら同じゲームをしていて偶々僕を知っていただけかもしれない。まぁそれだったら普通に怖いけど、


「あの....鉄人とは?」

「貴方のゲーム名でしょ」

「それはそうでけど、もしかしてファンタジアルで会いました?」

「毎日ね」


 疑惑が最後の言葉で確信に変わった。てかダイヤゴンが出た辺りから確信に近いていたけど、まさか同じ高校で同級生だったとは、何故LEDさんは僕に気づけたのだろうか?


「侍2世さん、何で分かったんですか?」

「それはね、仲間歴2年間で一年目は分からなかったけど、高校に入って期末テスト、文化祭、体育祭、その他諸々においてあなたがチャットでゲーム時間を決めていた事が私にも共通していたから、それに最大の決め手は数週間前のアレよ」

「アレ?」

「貴方が携帯を落とした時に男子生徒が届けに来たわよね」

「うん。あれは助かった」

「勿論風紀委員会経由でね」

「あ」


 LEDさんが言いたい事は大体理解できた。携帯を落とした僕、それを拾って何故か風紀委員に渡した誰か、それでチャット通知を確認したLEDさん、運命って案外近くにあるもんだな、


「それより時間がないからこの続きは放課後ね。素早くここに来なさい、分かった?」

「えぇ.....帰りたい」

「シバクワヨ」

「神足並で来ますよ勿論」

「宜しい、それじゃあいってらっしゃい」

「あぁ」


 僕は風紀委員室を出て自分の教室に向かった。侍2世に会えた事は嬉しかったが、まさか予想に反して女性だったとは、男子だと思って少し下ネタを混ぜたチャットを送っていた自分が恥ずかしい。



 LEDさん兼篠原奏視点


「.............」


 勇気を出して良かった。何故か今日彼から来てくれた事は嬉しかったけど、挨拶は他人行儀だったし逃げるように去って行った時は、無性に感情が揺らいだ。でも彼は私を知ってくれた。時間はかかったけど、これから私達の冒険ライフが始まる............良い響きね。


「............」


 もうすぐホームルームが始まるが、私にはやるべき事がある。今も必死に頑張っているが、彼が座った席を私が準備したハンカチで綺麗に拭く事、昼休みや風紀委員の仕事でこの席に女子が座った場合、自分自身が何をするか分からない。椅子は持ち帰れないし困ったものね。


「ふぅ....終わった」


 私は身支度を整えて風紀委員室を出た。さっき言ったは勇気を振り絞ったが、そのおかげで新婚気分を体験できたから今は人生で3番目に気分が良い。多分これから順位は落ちてくるけど、


「奏、おはよ」

「おはよう」

「今日は随分機嫌が良いね」

「まあね」


 遅刻ギリギリで走って来た彼女は、広瀬優菜であり、10年代の仲である。風紀委員の私と少しチャラい優菜は意外と話せば共通点が多い事から今では親友であり戦友でもある。


「急ごっか?」

「そうね」


 遅れそうなので教室に向けて小走りで行ったが、ギリギリで先生はまだ来ていなかった。でも分かっていても気分が落ちてしまう。凛君居ないし、男子の目気持ち悪いし、優菜がいる事だけが生き甲斐だった。でも今違う、凛君と会えたから今日は頑張れる。


「今日も篠原さん綺麗だな」

「我らの堕天使は輝きが違うな」

「異論なし」


 聞こえているし、私はあなた達の物ではなく凛君の物だし、勘違いは辞めてほしい。それに大声で喋る男子は苦手だから寒気がする。凛君は静かでも騒いでいてもカッコいいけど他は無理、ホームルームまで凛君とのチャット履歴でも見て落ち着かせよ、


「奏奏.....聞いてる?」

「何?優菜」

「私数日前にファンタジアル始めたよ」

「そっか、頑張ってね」

「うん頑張る......って、違うよ。一緒に遊ぼうよ」


 前の席に座っている優菜は後ろを向いて話しかけて来たが、拒否させてもらった。私達の愛の巣に他の女が入る事は私が絶対に許さない。それに、


「その........広瀬さんもファンタジアルやっているの?」

「うん、そうだけど」

「「「「仲間になって下さい」」」」


 男子生徒からリアル仲間申請が来た優菜は少し困っていたが、仕方ない事でもある。優菜は容姿は長い綺麗な茶髪にアイドル顔負けの整った顔、私より身長が高くスタイル抜群であり、性別関係なくフレンドリーな所が、優菜の魅力だった。


「ごめんね、私は奏とプレイしたいから」

「その.........篠原さんも仲間になってくれませんか?」

「ごめんなさい」

「「「「「.........」」」」」


 女子を誘ってまた違う女子を誘う。見ていて気分が悪い。去って行く男子達は肩にタカを乗せているくらいに落ち込んでいたが、私には関係ない。それに、


「優菜、さっきも言ったけど私は一緒にプレイしないよ」

「何で何で」

「私仲間いるし」

「なら私も仲間に.......」


 優菜は言葉を止めた。瞬時に私が出す雰囲気に少し怯えたらしい。優菜は嫌いじゃないけど、凛君には会わせたくないし、もしも絶対に無いけど凛君が優菜に好感持ったら、ゲーム兼現実で私はになってしまう。それは誰も望まない、なら優菜には悪いけど仲間にはなれない。


「そっか、奏のお仲間良い人なんだね」

「そうね、パートナーよ」

「ゲームの?」

「ううん、両方の」

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