第4話 侍2世

 昨日は普段とは違い気絶せずに眠りにつけて朝は最高の気分だ。ファンタジアルのお知らせを見ようと専用アプリを開くと、当然の様に侍2世が連打チャットを送って来ていた。もしかして側の可能性あるのか、


「ゲームはゲームだし、まいっか」


 普段と変わらず両親と朝食を食べて父さんを見送り、母さんに別れを告げて玄関に向かった。今日は体育がある日なので少し気分が落ちた。理由はシンプル、動くのが嫌いだから、


「よ」


 ドアを開けると、朝日と共にLED並の光が僕の目を潰しに来た。1週間に数回程度一也は家に来るが、別に待ってくれて欲しい訳でもなく、無視して歩いていると、


「今日はサッカーかバレーだな」

「そうだな」

「やる気が出るな」

「そうだな」

「でも女子がな......う」


 自慢話を朝から聞くのは胃に悪いので、代わりに一也の胃に物理的ダメージを与えた。すると当然の様に涙を堪えているので、周りの目をヒシヒシと感じた僕は、


「すまん、一也が自慢するから殴ってしまった」

「自慢?何の事?」


 これが俗に言う天然イケメンか、ケッ、無自覚な口を今すぐにホッチキスでムカデの足の様にしてやりたかったが、ホッチキスが無かったので、仕方なく無視した。

 今日も変わらず女子達は一也を神々しく眺めており、いつの間にか僕の日常はこの光景に染まっていた。このLEDに.......あ、


「そうだ一也、お前以外にも校内にLEDさんが居たぞ」

「まずLEDは辞めてほしいけど、凛が女子の話題を出すのは珍しいね」

「まぁな、昨日色々あったからな」

「そうなんだ。凛が言うなら見てみたいかも」


 一也が異性に興味を示した事は驚いたが、別に一也とLEDさんがガッチャンコしても別に良いので............最高じゃね。

 校内の女子は一也に告白をするが、その他の女子が許すはずが無いので、一也と同レベルの女子は見逃せない。僕のスローライフの為にも、


「任してくれ、僕が一也を幸せにしたるわ」

「おお、ありがとう」


 少し引き気味な一也を見ながら学校に向かった。計画はこうだ、LEDさんを探して一也にぶつける。それでめでたし、完璧だ。


「おはようございます」

「「「「おはようございます」」」」

「ああ、今日は風紀委員の日か」

「朝から頑張って凄いな」


 いつもは挨拶を軽くして通り過ぎるが、僕の目は誤魔化されない。男子共が足を遅くしている部分を逃さず僕達もそこに並び時間が経つと、


「おはようございます。あの...」

「おはようございます」


 よしLEDさんが風紀委員である事、男子に人気がある事、多分一也に惚れるだろう。僕はいつも通り素早く抜けて和也とLEDさんを二人にすると、


「待ってよ」


 何故だ。何故一也とLEDさんが僕に向かって走って来ているんだ。もしかして僕がキューピットになった事を両方から褒めてくれるのかな。足を止めて両者を待っていると、一也はいつも通りの顔だが、LEDさんは少し怒っている雰囲気がした。


「待ってよ凛」

鈴木凛君」


 ぜっっったいに言える。この二人は付き合っていない。消極的な一也と昨日も感じたが少し強気なLEDさん、ベストマッチと思ったんだけどな。


「二人共ごめんね」

「別にいいよでも......ごめん」

「え、何で?」


 さっきとは逆に一也が去って行った。そして残った僕達は静かな時間を過ごした。体感では数十分に感じたが、携帯を見ると何も変わっていなかった。


「私、まだ仕事があるから少し近くで待っていてね凛君」

「大丈夫です」

「分かりました」


 名前の知らない女子に凄い睨まれながら地蔵の様に静かに待っていると、挨拶終わりの男子達が惚気ながら学校に入って、惚気て入っての連続をずっと観察していた。数分後、風紀委員も終わったらしくLEDさんが近づいて来て、


「行くよ」

「?何処に」

「風紀委員専用の部屋に」


 何で?もしかして勧誘?違うな後ろの方で男子風紀委員が複数人睨んでいるから、もしここで断ったらどうなるんだろう?


「()」


 二文字の漢字が僕の頭を通り過ぎて不覚にも負けてしまった。別にLEDさんの顔が怖い訳じゃないし、ただ足が震えただけだし、


「分かりました」

「敬語大丈夫、私達同級生だよ」


 LEDさんは静かに前を歩いているので、仕方なく追う事にした。どうしてだろう睨まれ嫉妬され殺意を感じても大丈夫だ。一也のおかげで、


「「..........」」

「「「「「..............」」」」」


 仕方ない仕方ないけど、視線が痛い。女子より男子の方が視線が痛いと初めて気づけたので、LEDさんには感謝しよう。今後会わないのだから、


「着いたよ入って」

「失礼します」


 初めて来た部屋は、シンプルな部屋であり大きめの机に椅子が数席あったので、静かに座りLEDさんの言葉を待っていると、


「ホームルームまで時間があまりないから、省いて言うけど、の事まだ許してないから」


 何故今ファンタジアルの発掘率0.4%の鉱石が出てくるんだ。もしかして、


「初めましてさん」


 


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