第2話 モテる友達
朝7時に起きて昨日の戦利品であるダイヤゴンがボックスにある事を眺めながらゆったりしていると、昨日は見ていなかった最後に侍2世から送られてきたチャットを見てみると、
<侍2世:ごめん私ダイヤゴン一個無駄にした。君のせいだけどね>
何を言っているんだ。僕達は昨日深夜命懸けでダイヤゴン合計10個を僕達の宿に収納したじゃないか。ダイヤゴンは10個しかないのに侍2世は何を.....................あ、
「アイツキレてログアウト繰り返していたな」
アレは僕悪くないし、勝手にログアウトしまくったアイツが悪いし、それにダイヤゴン5個渡したし、何も文句は言わせない。同情を込めてチャットに、
<鉄人:ドンマイ>
よし、今日は月曜だしゲームの疲れもあるが、身支度を整えていると、携帯にメッセージが届いた。僕はファンタジアルを携帯とリンクさせているのでチャットとお知らせだけは携帯に届く。歯を萎む目を堪えながら磨きながら見ると、
<侍2世:君の罪だよ。私は裁判を要求する。今日の午後6時に宿屋に集合>
長年一緒に居るから分かるけど、結構怒っているな。昨日てか今日も説教くらったのに何で裁判までくらうんだよ。ダイヤゴンは惜しいけど我が子を渡した恩を身に感じて欲しいものだがな。
<鉄人:分かった>
チャットを見ながら身支度を整えた僕は、8時くらいに家を出て家の役割であるゴミを家の前にある籠に入れて、学校に向かった。何も変わらない道を静かに歩いていると、目の前にいるカップルらしき二人が何やら面白そうな会話をしたいた。
「聞いた?ゆーくん」
「何が?」
「ファンタジアルだよ。あのゲームを最近始めたんだけど、初心者ボーナスが最近できてダイヤゴン?が一個無料配布してくれるらしいよ」
「まじかよ。俺1年くらいプレイしてるけど運良いな由里は」
「でしょ」
何が初心者だ、何が初心者ボーナスだ、何が運が良いだ、昨日の僕の7時間を返せよ運営、そして初心者ボーナスと1時間説教が同等ってふざけんなよ。よし、5分間の記憶よ消えよ。............消えたな、行くか。
「はぁ.......」
ダイヤゴン我が子よ、お前達は鶏の卵の様に量産型の代物だったんだな、でもダイヤゴンは加工工程にダイヤゴンが必要だから実質勝ちみたいな............何故か虚しい、
「一歩歩いて2歩目を前にそして3歩目は」
「よ、凛」
「おはよ、一也」
後ろから凛こと鈴木凛を呼んだ人物は、同じ学校で同じクラス、そして数少ない友達、横海一也又の名をLED、僕が入学当初一也を見てファーストインパクトで付けたあだ名だ。その光の威力は、
「見て見てあの人やばくない」
「..............あ、鼻血が」
「あのお兄ちゃんってお父さんにならないかな」
短いスポーツ刈りにキリッとした顔、高校生離れした憎いスタイル、全てが光っていた。そして、LEDを見て鼻血を出す女子高校生や戸籍の変更を母親にお願いする幼稚園児、やっぱりコイツは危険だ。居るだけで女子が寄って来る。
「またあのあだ名を連呼してるな」
「勿論」
「流石に隠せよ、一応友達だよな」
「一応な」
「凛が冷たい.........うぅ」
彼の唯一の弱点は脆い、全てが脆い、少しでも傷付いたら泣くし、今思えば最初にLEDって言った時は、噴水並の涙を流していたな。アレで女子の評価が数段下がった僕としてはイーブンだと感じている。
「一也、もう着くからほらハンカチ」
「ありがと」
校門を抜けて学校に入り、一也と雑談しながら教室に向かっていると、分かっているが少し気を使うんだよな。
「あ、ごめんトイレ行くわ」
「そっか、先に教室で待ってる」
「おう」
大丈夫だよ一也、君が僕より先に教室に入るのは不可能だから、その証拠に一也の後ろを様子を見ながら歩く女子が一人、モテるって友人側も辛いんだな。
「最近朝トイレで手を洗う回数増えたな」
そんな呑気に独り言をかましながらポケット内を探っていると、いつもある場所にアレがない。一瞬戸惑ったが、再度今日を振り返ってみると、アイツの手にある事が分かった。仕方なく少し手を振ってトイレを出ると、
「きゃ」
目の前でバナナや雑巾が無いのに綺麗に足を滑らした女子生徒がこっちを見ながら何か訴えていた。スカートの中は見えなかったし、初対面だし、もしかして思い手を差し出すと、
「ありがとう.........ん」
「あ」
初めて見た綺麗な滑りに関心して自分の手の状態を確認せず差し出してしまった。今何故か相手側の手が僕の手を強く握りしめているが、離すのが常識ではないのか、
「あの.......僕から言うのも変ですけど離してくれませんか?」
「うん、ありがとう」
「う」
笑顔と爪痕を残して去って行ったが、僕はまた考えてしまった。ファーストインパクトの名の下にあの女子生徒をLEDと名付けよう。一也に負けない綺麗なクール顔に黒髪ショート、スタイルは言わずもがなポンキュキュ、モデルスタイルだ。周りの男が群がっていて夜中の公園を連想させてくれた。
「すいません」
離れていくLEDさんに聞こえる声量を飛ばして、何故か小走りになるLEDさんは少し面白かった。用事を終えた僕は教室に向かいクラスメイトと挨拶を交わしながら席に着いた。当然一也は居なかった。暇な時間はゲームをするか、お知らせなどを見ているが、
「またか」
侍2世から数件のチャットを送られているが、チャットを送れない僕からしたら受けて一本だったりする。大抵しょうもない話なので軽く読んでいると、
<侍2世:学校嫌だ>
<侍2世:私っていう完璧な仲間を持って君は幸せ者だね>
<侍2世:あぁ........寝みたい>
<侍2世:そう思わない?>
思わないし、返信できないし、コイツはどう送っているんだ。僕の推測で同じ高校生だと思う。長年チャットをしていて幼少期に見たテレビやアニメの話、少し違うが王道は同じである為、多分だが同年代である。
「はぁ.....コイツ暇人だ」
学校に行っていないか、学校にゲームを持参しているかの二択しかないので、両方を考えてもコイツは少しおかしい。僕は改めて2年間共に戦った仲間に不信感を積もらせた。
「はぁはぁ.....」
「お疲れ様一也」
片手に2枚の手紙を持って汗だくな友達を見ながら世の中の残酷さを噛み締めた。しかし歯軋りが異様に大きく聞こえる。そらそうだよな、お前らも悔しいよな。同士達と一也を睨みながら朝のホームルームが始まった。
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