ゲーム仲間が両次元で束縛してきて大変困っている件

ブラックコーヒー

第1話 仲間

 


 あるゲーム会社が2年前に発売した「ファンタジアル」は、空前のゲームブームを発掘した。次世代型インプットゲーム機を開発して他社の競争を遮断して、ゲーム業界では覇王の位置に君臨した。そして看板商品であるファンタジアルは二次元と三次元の区別を混ぜた2.3次元とも呼べるくらいにリアリティのある神ゲームへと賞賛された。そして、平凡な人間である僕もこの神ゲーを買っていた。


<鉄人:おお今日は運が良いな>

<侍2世:誰のおかげ?..........わ、た、し>

<鉄人:ありがとうございます>


 初心者がスポーンされる街から出発してストーリーで言えば第二の街「ユリザーク」、僕達はユリザークの周辺にある鉱山で採掘をしていた。そして、侍2世がユリザークの鉱山限定で発掘率0.4%のダイヤゴンを掘り当てた。


<侍2世:あぁ......ツルハシ壊れそうだな>

<鉄人:そっかなら持ち替えれば新しいやつに>


 侍2世がログアウトしました。


「はああああああああああああああ」


 レアアイテムを持ち逃げされた。掘り当てたのは侍2世だが、その間、一緒に掘っていた僕の恩恵も合わさって掘り当てたダイヤゴンをアイツは...............まいっか、


「別に掘れば見つかるだろ」


 一度ある事は二度あり二度ある事は三度ある、この言葉でこの場所にダイヤゴンが二つある事が確定した。なら僕が行う事は、無我夢中で掘る事、そしてあの裏切り者を嘲笑う事、


「.........................」


 3時間経過、


 ノーマル石100個、骨石20個、金塊のカス5個、土辺り一面、うん侍2世にゴマすろっかな、嫌々違うぞ僕、見返すと決めたんだ。なら動かすのは口では無く手だ、




 4時間経過、


 その他省いて、ダイヤゴン10個、これは運命だ。発掘率0.4%のダイヤゴンが10個は命を狙われる。偶々丸みのある土を掘ったらダイヤゴンの塊が出現して、割って見ると、塊がダイヤゴン10個に変わっていた。


「これはアイツに連絡だな」


 このゲームは各街にある宿屋、家などで部屋に入る事でセーブされるが、今宝を持っている鴨こと僕が、ゆったり歩いて襲われて今日枕を濡らすのはぜっっったい嫌なので、侍2世に連絡した。望み薄だが....今深夜2時だし、


「やっぱり無理かな、すまんダイヤゴンちゃん」


 汚い大人達に我が子を奪われる想定で、鉱山を出ようとした時、左隅にあるチャットから救いの手が差し伸べられた。


<侍2世:どした?>

<鉄人:帰るの怖いから今日行った鉱山まで来てくれない>

<侍2世:きおつけてな>

<鉄人:まままま待ってくれ、見捨てないでくれ。お前だけが頼りなんだ>

<侍2世:おけ>


 2年ほど一緒にプレイしてるが、「頼りになる」、「大好き」、「一緒に居たい」、などの言葉を送れば優しくしてくれるので、毎回ピンチの時だけ活用している。


<侍2世:来たぞ>

<鉄人:あざっす>

<侍2世:それで?>


 ログインして頂き、ユリザークの宿から来てくれた戦友を涙を堪えながら迎えて、僕は今日あった奇跡を軽やかに話して、ドヤ顔で仁王立ちしていると、


<侍2世:あっそ、それでほい?>

<鉄人:???>

<侍2世:ダイヤゴン>

<鉄人:ああ、これで僕の勝ちだな>


 侍2世がログアウトしました。


「はあははっははああはははh」


 本日二度目のログアウト、多分分かっていたけど掘った僕を褒めてほしかったが、自慢した顔に苛立ちを抑えれずログアウトされ、又しても我が子を危険に晒してしまった。


<鉄人:すいませんでした。半分渡すのでログインお願いします>


 音信不通、今みんな思った事があるだろう。僕自身ログアウトすればいいんじゃね。違う違う、そんな甘いゲームなら楽だが、このファンタジアルはセーブ場所には今日所持した物が保管され、もしもしだよ僕が今この場所でログアウトしたら我が子は見えない世界で路頭に迷う事になる。


「そんな親は親じゃない」


<鉄人:親愛なる仲間侍2世様、私が間違っていました。これからも一緒に頑張りたいのでまたお越し下さいませんか>



 現在深夜2時40分、


 我が子を必死に守りながら、鉱山で隠れており、数人ほどプレイヤーが訪れダイヤゴン目当てで掘っては去ってを繰り返していた。やばいよ、このまま侍2世が来ないなら一か八か賭けるしかない。


「うううう、最後の希望」


<鉄人:もう知らん、今後は綺麗なお姉さんと組むし、ダイヤゴンがあればお姉さん寄って来るし>


 最終手段解散予告、別に本気ではないがこのまま我が子が消えるか奪われるのは心が痛いので、ここは鬼になって侍2世を誘き寄せる手段をとった。すると、


<侍2世:行く、そこ動かないで絶対>


「待っていました。よしよし、侍2世は絆を結構大切にしている節があるので、この手は奥義であり再度使えないが、今は何も考えない。例え将来なにがあっても、


<侍2世:来たよ>

<鉄人:ありがとうございます。これダイヤゴン5個です。お納め下さい>

<侍2世:ありがとう、それよりさっきのチャット何?>


 チャット?なんの事?我が子は二手に別れたが、半分の5個は確保できたのでその喜びに浸っていたが、侍2世の言うチャットを再度見ると、


<鉄人:帰ろっか>

<侍2世:帰れないよ。私は鉄人の仲間だよね>

<鉄人:勿論>

<侍2世:なら宿に帰ってからお話しよっか>


 何事もなくユリザークの宿に帰れて、深夜3時、侍2世があのチャットについて1時間程度の説教にあい、ログアウトする時は窓ガラスから少し光が照らしていた。あああ、眠い。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る