第6話 柔らかい感触

 柔らかい感触に心地の良い温かさ。気がつくと私はみどりに膝枕されている状態で目覚めた。


 みどりは私が起きたのに気がついたのか微笑んでくる。私は急いでみどりから離れ距離をとる。起きて早々なので思考があまり思うように動いてはくれないが本能が離れたほうがいいと言っている。


 みどりは立ち上がり私の方に近づいてくる。私はそれに合わせて後ろに下がっていく。恐怖を感じているのか足腰が震えている。


 「み、みどり・・・?どうしたのかな・・・!?」


 「うん?唯化こそどうしたの震えてるけど?」


 みどりは微笑みながら徐々に徐々に距離を縮めている。微笑んでいるのになぜだか微笑んでるように見えないのはなぜなのだろうか。


 私が怯えているから?それとも・・・これ以上考えたって仕方が無い気がする。私は逆にみどりに近づいていく。すると、みどりは引きつった笑みを浮かべながら後ろに下がっていく。


 「どうして下がってるのかな・・・?」


 「なんでもないよ・・・唯化こそどうしたの私に近づいてきて」


 「なんでだと思う?」


 私は挑発的な表情を浮かべながらそのままの勢いで近寄っていく。みどりが少しばかし苛ついているように見えるがそんなこと気にもしない。気にした時点で負けは目に見えている。


 徐々に徐々に距離を詰めていくがみどりの様子がどこかおかしい。一見何も変わっていないように見えるが本能がそう言っている。しかし、私は本能のことを気にもしない。


 「いい加減にしないと襲っちゃうよ♡」


 「そんなこと言ってホントは襲うこと出来ないくせに・・・?」


 みどりの目にハートマークが浮かんでることに気づきもせず、私は勢いのまま威勢よく挑発してしまった。みどりは下をうつむいて黙ってしまっているため怒らせてしまったのではないかと思い、先程の発言をしてしまったことに後悔し始める。


 私は顔が青ざめていくのを感じながらその場で膝から崩れ落ちる。みどりは下を向いたまま私に近づいてくる。私は身体を動かすことが出来ないためどうしようもなかった。  


 「調子乗ってる唯化も可愛い」


 「ふぇ・・・?」


 みどりはそう言いながら私に抱きつく。突然のことに何が起こっているのかわからず固まってしまう。


 みどりに襲われると思っていたので拍子抜け状態だったが段々とみどりの息が荒くなっていくので私は離れようと腕を振りほどこうとする。


 しかし、そんな抵抗は無意味でしかなかった。それどころか余計にみどりが熱くなっている気がする。一体何を想像しているのかわからないが私は可愛くもないし襲う意味がないと思う。


 そんなことを思いつつどうしようかと思考を巡らせていた。だが、どんなに考えても答えは出てこなかった。


 「ねぇ、みどり?そろそろ旅に出よ・・・?」


 「わかった。じゃあ、離れる」


 みどりは案外すんなりと私のおねがいを聞いてくれた。私は安堵しつつ胸を撫で下ろす。


 「唯花立って・・・?行くんでしょ」


 「う、うん・・・!」


 私はみどりに急かされようにそう言われたので立ち上がると、突如として頬に柔らかい感触が伝わる。それは妙に生暖かくてまるで唇のようだった。


 「唯花行こう?」


 「ちょっ・・・!」


 みどりはそのまま私の手首を摑んで前へと進んでいく。考える暇すら与えられないが考えるのは時間があるときに考えればいい。今すべきことは旅に出ることだ。


 


 

 

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