クラス企画も見て回ろう!
異性装コンテストが終わって、クラス企画と模擬店が始まった。
ママは「学校とか懐かしい!」と何度も言っている。私ははしゃぐママと一緒にやたらと飾り付けられた校内を歩く。
「ケンちゃんのクラスは何をやるって言ってたっけ?」
「クイズ大会、だって」
なんでも、いろんなクイズをやって楽しんでもらうそうだ。早押しクイズのボタンとか三択問題の選択肢とか子供向けのなぞなぞコーナーとか、とにかくクラス総出でいろんなものを作ったらしい。
廊下を歩いていると、それぞれクラスの前に異性装コンテストの出場者たちが同じ格好でスタンバイしている。客寄せになるんだろうな。
……ってことは?
「あー、ケンちゃん! どこの可愛い子かと思った!」
ママがおばさん全開の声を出す。兄貴のクラスの前にいたのは、かっこいい男装役の
「ああ、これ俺の母さんと妹」
ボケピンクはまだ緊張しているのか、少し声が震えている。
「初めまして、小西
かっこいい小西さんは私とママに深々と礼をする。
「いやいや、こんなので良ければ、どーぞどーぞ持って行っちゃって!」
ママ、何だかすごく嬉しそう。
そして小西さんは近くで見ると本当に背が高くて、かっこいい男の人みたいだ。隣にいるぼさっとしたピンクは、きっと私の知らない人だ。
「お母さんも妹さんも、どうぞクイズに参加していってください」
「えー、こんなおばちゃんなのにもうー」
そう言ってママと私は小西さんに教室の中に引き立てられていった。教室はクイズごとに場所が仕切られていて、ママは郷土クイズというマニアックなブースで高校生とクイズを楽しんでいる。
(みんな頑張ったんだろうな……)
教室の入り口を見ると、例のピンクは小西さんと一緒に何だかいろんな人にへこへこしているように見える。他のクラスの友達なのか、ピンクの周りに人が集まっている。
「何だよオリジン、どこの美少女かと思ったじゃん」
「いやーん、楽しんでいってねー!」
オリジン……? 変なあだ名……。
調子に乗ってるピンクがバカ全開のリアクションをしている。ああ、見ていられない。
「だからお前は黙ってろって!」
小西さんに突っ込まれて、ピンクがしゅんとする。それを見て周囲は大笑いする。
「そんな、駅前の銅像を作った人なんてわかんないわよお!」
ママの郷土クイズより、私は高校での兄貴の様子が気になって仕方なかった。
(なんなの。普段はもっと馬鹿なこと言ってるのに……)
そう思うと、私なんかがこの教室にいてはいけない気がした。ここにいるのは優等生の
(なんでアレが私のお兄ちゃんなんだろう……)
改めてお兄ちゃんを見る。
男の娘用のサイズのふわふわピンクのワンピースに白タイツ。ピンクのウィッグに大きなリボンのついたピンクのヘッドドレス。靴は女の子が履いていてもおかしくないデザインのローファー。これは誰かから借りたのかな。
今日は本番ということなのか、前回より全体的に化粧が濃い気がする。マスカラでまつ毛がバリバリに盛られて、グリッターで目元はギラギラしている。
そして気がつかなかったけれど、爪にはピンクベースのすごくキレイなネイルチップが付いている。
相変わらず動きとか声は男丸出しで、黙っていれば可愛いのに動き始めると残念になってしまうのがアイツの本当に残念なところだ。
そして本当に残念なことに、妹から見てもお兄ちゃんはすごく可愛い。そしてお兄ちゃんの隣に、とてもかっこいい女の人がいる。とても仲が良さそうで、少し見ているとモヤモヤする。
「あーちゃんも一緒にクイズしよう?」
ママに声をかけられて、私は慌てて何でもないような顔でクイズに挑戦するふりをする。
いいな、クイズは答えがあってすっきりして。
私は家に帰ってきたあのバカピンクと、どう顔を合わせればいいんだろう。
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