ちょっと何やってんのさ!?
晴れた青空の下、いよいよ異性装コンテストが始まった。グラウンドに作られたメインステージに、次々とクラス代表の男女が上がってくる。
最初は1年生からで、最初の学園祭だから微笑ましい感じの異性装が続いた。学校の制服を男女別に入れ替えただけとか、その辺で売っている制服のキットをそのまま着ただけというクラスもあった。
2年生になるとクオリティがぐんとあがった。女装も男装も衣装をしっかり調達してきていて、メイクもばっちりという感じになった。それにどこのクラスもネタを秘密にしていたらしく、会場での盛り上がりは相当なものだった。特にウケ狙いでジャイ子と裸の大将の格好をしてきたクラスには私も笑わせてもらった。
「次はいよいよケンちゃんのクラスね」
ビデオカメラを片手にママが張り切りだした。そうだ、これを見届けるために私はここまで来たんだった。司会の紹介のあと、男装役の
『今日はみんなに僕の恋人を紹介したいんだけど、みんなどこにいるか知らないかな?』
放送でとても格好いい男の人の声が流れる。その声に合わせて小西さんは身振りをする。長身で手足の長い小西さんは、華麗にステージの上を駆け回る。
『とても美しい人なんだ、僕はもう、彼女なしでは生きられないんだ!』
声に合わせて演技をしているので、まるで小西さんがそう言っているように感じる。果たして「さてもさても」の人はこんな高レベルなことができるんだろうか……?
『そちらにいらっしゃるのは、私の運命の方でよろしいですか?』
可愛い女声の吹き替えと共に、ステージの袖にピンク色の塊が見えた。
『探していたんだ、こっちに来てくれ!』
そこにおずおずと登場したのは、ピンク色の美少女だった。会場がどよめいて、ピンクの美少女はまるで怯えているようだった。
『しかし、私のような者が人前に出るなど、とても恥ずかしくてできません』
美少女は棒立ちで手を口の前にして震えている。端から見れば本当に恥ずかしがっているように見えるけれど、あいつの妹歴16年の私にだけはわかる。あれはただ緊張しているだけだ。
『そんな、恥ずかしがらないでこっちにおいで』
小西さんがスタスタと兄貴のところまで歩いて行く。そしてその手を取り、ステージの中央に連れて行く。ああ、すごくかっこいいな、この人。私も惚れちゃいそう。
『君は素敵だよ、その奥ゆかしいところが僕は大好きだ』
そして小西さんはピンク色の兄貴の腰に手を回して、手を頭の後ろに回す。それから少し身体を捻って、キスをしたように見えた。
え、何やってんのあいつ!?
たかだか学園祭でそんなことすんの!?
会場からは大きな歓声があがった。ママは隣でビデオカメラ片手に硬直している。何だか急に私は恥ずかしくなってきた。なんで私、あいつの妹なんだろう。本当に訳がわからない。
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