私ってブラコンなの?

 クラス対抗の異性装コンテストが始まる前に、私は中学時代の友人と再会した。


「めぐちゃん! わー久しぶり!」

「本当に久しぶり! ねえねえ、朱美あけみちゃんが来てくれたよ!」


 私の友人、田崎恵たさきめぐみのかけ声で懐かしい顔が一斉に集まってくる。みんな同じ中学から進学した友達たちだった。


「わー、本当に朱美ちゃんだ!」

「久しぶりー!」


 何だか懐かしくて、私は少し泣きそうになってしまった。しばらく近況報告をして、恵以外の子たちは自分のクラスに帰っていった。


「そう言えば相模さがみ先輩がコンテスト出るんだってね!」


 恵に兄貴のことを聞かれて、ちょっと顔が曇る。


「う、うん……それで見に来いって言うから仕方なく来たんだよね」

「そうなんだ、やっぱり仲がいいんだね」


 そうかな、わりと普通だと思うんだけどな?


「だって仲良し兄妹だったじゃない。たまに一緒に帰ってたでしょ?」

「そりゃ、家が一緒だから帰るでしょうよ」


 すると、恵は不思議そうな顔をする。


「普通の中学生って、兄妹で一緒に家に帰らないと思うよ?」

「そうなの!?」


 そうなの? 私って変だった?

 中学の時は普通に教室まで来て「朱美、一緒に帰るぞ」って言うから帰ってただけなんだけどな……。


「あとさ……この際、今だから言うけどね」


 恵は声を潜めた。


「私ね。朱美ちゃんに告白したいっていう男子から結構相談受けてたんだよ」


 何それ!?

 そんなことあったの!?


「でもみんな揃って、朱美ちゃんが相模先輩と並んでいると勝てる気がしないって諦めててね……男心って複雑だよね。好きなら好きって言いなさいって言ったんだよ、私も」


 そんな、私がお兄ちゃんのこと好きだってみんな思ってたってこと!?

 そんなわけないでしょ!!


「え、でも本当にただの兄以外の何者でもないと思ってるんだけどなー、私は」

「じゃあ素直にコンテスト楽しめばいいのに」


 ん? どうしてそういう話になるの?

 恵は何だか急にニヤニヤし始める。


「相模先輩の女装も楽しみだけど、私は小西こにし先輩の男装も気になってるんだよね」

「えっと……うちの兄の相手役の人だっけ?」


 そう言えば、相手の人はバスケ部のエースとか言ってたっけ。そっちの筋で有名な人なんだろうな。


「そう、みんな楽しみにしてるんだよ。どこのクラスもネタを隠してるから、今日は本当に楽しみで!」


 それじゃあうちのクラスにも来てね、と言って恵は自分のクラスに戻っていった。


 ええ、私ってそんなにお兄ちゃん大好きっ子に見えていたのかな……? 他人が格好いいとか言っていても、私にとってはボケボケでアホの兄貴でしかないのに。


『お待たせしました!』


 グラウンドに元気な声が響き渡る。どうやら異性装コンテストが始まるらしい。高校の生徒たちが元気にわーっと司会の声に応える。ああ、青春だなと私は他人事のように見ていた。

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