第6章 ︎︎学園祭当日だ!
私は私でいいんだよね?
学園祭当日。天気は快晴で気持ちのいい日になった。
「それじゃあ行ってくるからな! ちゃんと見に来いよ!」
学園祭は2日あって、グラウンドのメインステージでは初日にクラス対抗の異性装コンテスト、2日目がダンスや軽音楽部などの発表となっているようだ。両日クラス企画や模擬店は11時からで、そちらの準備もかなり時間がかかったようだった。
「ちゃんと見に行くから、頑張ってきてね」
「おばあちゃんに動画送るから頑張るのよ」
ママは昨日からビデオカメラを充電してほくほくしている。そんなに息子の女装を自分の母親に見せたいんだろうか……私にはよくわからないな。
***
兄貴の高校まではママと一緒に来た。この辺で一番頭のいい高校だけあって、学園祭の力の入れようがかなりすごい。
「すごいわねー、この門とか時間かけたのねー」
正門には大きくて立派なアーチがかけられていた。美術部の制作らしい。
「こんにちはー! パンフレットをどうぞ!」
スタッフと思われる生徒たちからパンフレットを手渡される。事前に兄貴から見せてもらっていたけど、パンフレットの作りも丁寧だ。
(さてもさても……)
正門からグラウンドのメインステージに至るまで、いろんな人がいろんな準備をしていた跡が見えた。クラス企画のポスター、メインステージの案内、花壇の花、その他いろいろ。
私とママはメインステージ前にやってきた。私たちのような一般客の他に、クラスTシャツを着た生徒たちが自分のクラスの発表を見届けようと集まっていた。
「そう言えば、あーちゃんはお友達と来なくてよかったの?」
「え、だって……」
そりゃ、私だってママとじゃなくて同じ学校の友達と来ることも最初は考えた。だけど「うちの兄が女装していて」というのが何となく嫌で、誰も誘わずに来ていた。そもそも同じ高校の友達には兄がいるということは言っていない。別に兄弟の事情なんて言っても言わなくてもいいと思ってるし、友達の事情だって知るつもりもない。
『あ、
『ねえねえ、お兄さんにこれ渡してくれない?』
残念なことに、私の兄は優等生だった。見た目はいいし勉強は出来る。私も頑張ってはいるけれど、兄貴ほど出来るわけじゃない。特に中学では露骨にいろいろ比べられるし、私を介して兄へ手紙を渡してくれという依頼も多かった。
中一のときは、そのせいで嫌がらせに発展したこともあった。全く私が悪いわけではないのは明らかだったので、周囲もかなり庇ってくれたのが幸いだった。でも勝手に兄に横恋慕した先輩から「なんでアンタみたいなのが妹なの!?」と訳のわからないことを言われたのはキツかった。この女には兄も迷惑していた。そう言えばあの女は最終的に学校に来なくなったんだったな。一体あれは何だったんだろう。
だから、何というか私をしっかり私として見てくれる友達が欲しかった。兄貴抜きでも頑張ってる私を見てほしいなっていつも思っていたので、高校に入ってからが本当に楽しかった。
「あ、
私を見て、クラスTシャツの群れから手を振って出てくる人影がいた。
「……めぐちゃん!」
出てきたのは中学時代の友人、
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