女の子は回りくどい?
学園祭のコンテストのために「女らしい振る舞い」を身につけなければならない兄貴は、わざわざ本を借りてきて一生懸命勉強しているようだった。
「それで、本を読んで何かわかったの?」
どうも「女らしい振る舞い」を勉強するために兄貴は「女の子入門書」というような本を何冊も読んでいるようだ。リビングにそんな感じのキラキラした本がいくつか並んでいる。
「……月経の仕組みはよくわかった」
気まずそうに兄貴は答える。そりゃ、そういう本って、要は半分以上そういうことだもんね……女の子って書いてあるけど、大体において性教育の話しか書いてない。
「あのさあ、
急に兄貴が真面目な声になる。
「なんで女向けの本ってあんなに読みにくいんだ!? あっちこっちに吹き出しだのコラムだのぐちゃぐちゃ図解しやがって!! もっと言いたいことははっきり書け!」
「そっちのが可愛いのよ、きっと」
「だから! 可愛いを優先して情報が渋滞するのは何でだ!? あと余計なイラスト!! 大して意味があるとは思えないキャラに吹き出しをつけて『これじゃ大変!』じゃないんだよ! そういうのはいいからもっと有意義な情報を載せろよ!」
そこまで怒ることじゃないと思うけど、一理あるとは思う。確かに女性向けというか、女児向けの本って細かくてごちゃごちゃしているかもしれない。
「例えば有意義な情報って?」
「そうだな……例えばこのナプキンの持ち歩き方っていう項目なんだけどな」
兄貴は持っていた本のページをぺらぺらめくって具体的な話を始める。
「先輩たちに聞いた、あなたはどうやってナプキンを持ち歩いてますかという質問。このページの結論は『あなたに合った持ち方を探そう』だよな!? だったら先輩はどうのとかどうでもいいからポケットつきショーツだのハンカチ型ポーチだのの有用グッズの紹介でおしまいでいいだろう!? なんで持ち歩きひとつでこんなにグダグダ書くことがあるんだ? この先輩キャラのイラストだって何人もいらないだろう?」
うーん……。
「それはさ……このページの言いたいことは『賢くナプキンを持ち歩こう』じゃなくて、『私たちもナプキンの持ち歩きには苦労してるよ、わかる-!』ってところだからじゃないかな……?」
「じゃあそう書けばいいだろう!?」
「それじゃあ身も蓋もないじゃない……なんて言うのかな……?」
ああ、でも何となく兄貴の言いたいことも本が伝えたいこともわかった気がする。
「女の子は情報を求めてないの。大事なのはまず自分を受け入れてくれるかどうかだから、こうしろっていうアドバイスよりも誰かの体験談っていう体裁のほうがわかりやすいんだろうね、きっと」
よし、自分でもうまくまとめられた気がする。この辺の感覚のズレは男女で確かにあるかもしれないな。
「なるほど、大事なのはまず自分を受け入れてほしい、ということか……その視点は俺にはなかったかもしれない」
そう考えると男の人って「自分を受け入れてほしい」って感覚はあんまりないのかな……やっぱり男ってよくわかんないな。
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