私もロリータ着るの!?
すっかり可愛い女の子になってしまった男子高校生を前に、
「……かっわ」
「ま、え、ちょなに?」
すっかり語彙力が飛んだ2人は大喜びでスマホを構え、撮影会に入る。
「え、そんなに可愛い?」
2人の反応を見て、兄貴が反応に最高に困っている。
「可愛いよ可愛いよすっごく可愛い」
「喋らなきゃ本当に可愛い」
そう、喋らなきゃ本当にどこからやってきたのかと思うくらい可愛い女の子だ。喋らなきゃ、というのがポイントだ。とりあえず私もママ用に写真を撮っておいて、撮影会は終わった。
「じゃあ、鏡見る?」
ここにきて、初めて兄貴は自分の姿を見せてもらえることになった。
「ええ、ちょっとどきどきするな……」
渡された鏡を覗き込み、兄貴はしばらく固まっていた。
「どうしたの?」
「どんなリアクションしていいのかよくわからない」
顔が引きつっている兄貴に、有村さんがアドバイスをする。
「そういうときは、口に手を当てて『まぁ』って言うの」
口に手を当てる有村さんの真似をして、兄貴も口に手を当てる。
「……まぁ?」
その様子を見て有村さんと梨崎さんは顔を見合わせた。
「後は細かい演技指導ねえ」
「男装チームも気合を入れているんだから、こっちも気合い入れていくよ」
「うん……」
衣装が決まったと思ったけど、何だかまだやることはありそうだ。女装って思いのほか大変なんだなあ。
***
撮影会を終えてメイクを落とし、兄貴は着替えてきた。それからママの作ったケーキをみんなで食べることになった。
何だかんだと兄貴たちの学校の話を聞いているうちに、有村さんが私と兄貴を眺めて言った。
「こうして見るとさあ……やっぱり兄妹って似てるよね」
それはよく言われる。でもそれって兄妹だから当たり前だ、と昔から思っていた。それから、有村さんが思いついたかのように言う。
「そうだ
え、なんでそうなるの!? そりゃ、さっきの見たら同じような顔の女の子が着たらもっと可愛くなるかもしれないけど、私はあそこまでごてごてのロリータを着る趣味はないよ!?
「いえ、私はちょっと……」
私の返答を遮って隣のバカが口を出す。
「ダメだよそいつは。絶対似合わない」
な、なんだと!?
「こいつはピンクとかリボンとかは似合わない。俺が断言する」
「断言するな! もう本当に失礼なんだから!」
にやにや笑う兄貴に怒る私に、「仲が良さそう」と笑う有村さんと梨崎さん。私だってもしかしたら着たらすごく似合うかもしれないじゃない! なんでこんなバカと兄妹やってるんだろう!?
***
こうして有村さんと梨崎さんは帰っていった。仕事から帰ってきたママは、私の写真を見て大いに喜んでいた。そして今度こそおばあちゃんにコメントなしで写真を送った。おばあちゃんから「朱美ちゃんかわいいね」と返信が来て、「これ謙介」と送るママの顔がとても豊かだった。
そんなに私たちは似てるんだろうか……?
でも私もロリータを着たら、あんな感じになるのかなあ……?
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