化粧品コーナーで騒ぐな!
私と兄貴のドラッグストアでの「女コーナー巡り」は続いていた。
「女コーナーと言ったら、コスメじゃないの?」
「コツメ? ︎︎カワウソか?」
「コスメ! ︎︎化粧品!」
「あー、はいはい」
あーはいはい、はこっちのセリフだよもう。
私はバカ兄貴を連れてコスメコーナーまで来た。
「あのさぁ、前から思ってたんだけど……」
「なに?」
「これ、めっちゃキレイだよな」
そう言って兄貴はずらりと並んだマニキュアの色見本を楽しそうに見ている。
まあ、気持ちはわからなくもないかな。
「うん、どの色にしたいとかある?」
「これがいい」
そう言って兄貴が指さしたのは、鮮やかな水色のマニキュアだった。
「それはアンタのピンクのワンピースには合わないでしょ……」
「あのワンピースに合わせるとはひと言も言ってないだろ」
「うん、まあ……」
「ただこの色がキレイってだけ」
……そう言えば、そんな風に思って何かを選んだことって最近あったかな。服を買うにしても私に似合うかとか、持ってる服に合わせられるかとか、そんなことしか考えてなかったかも。
「でも、それだけだと女の服はダメだからね」
「わかってるよ、うるさいな」
そう、純粋に好きな色を着たいとか合わせたいとか、それだけだとちぐはぐでおかしなことになっちゃう。好きなものを好きなように合わせるって、本当に難しいことなのかもしれない。私の頭にジュンさんの顔が思い浮かんだ。
「お、ツケマだツケマ」
兄貴の興味はマニキュアからまつ毛グッズに移ったようだった。
「アンタはいらないんじゃないの? ︎︎まつ毛長いし、目もバッチリ二重だし」
かく言う私も、こんな奴の妹なので目はバッチリ二重だ。二重のりやテープのお世話になることはないだろう。
「でも何だっけ、このマラカスってヤツはちょっと興味ある」
マスカラのことだろうけど、敢えて訂正はしなかった。
「それより、化粧品は貸してくれるって本当?」
「ああ、クラスでそういうのが好きな奴がいてさ。なんか事前に買っておいてくれっていうメモがあったんだけど……これだこれだ」
そう言って兄貴はポケットから紙切れを取り出す。
「何でそういうことを早めに言わないの!?」
「え、言わなかったっけ?」
「聞いてない!!!」
……あー、本当にこいつの相手疲れるなー……。
「えーと……ファンデ用のパフと、アイカラー用のチップとブラシ各種、それとコットン含めスキンケア用品ね……スキンケア用品はこの前あげた奴があるからいいよね」
「百均でもいいらしいぞ」
「せっかくいるから、ここで買っていくよ……」
私は使い捨て用のパフなど各種化粧用品を拾い上げて、買い物カゴにぶち込む。
「お、
いつの間にか基礎化粧品コーナーまで遊びに行った兄貴がパックシートを持ってくる。
「好きにすれば……」
こうして除毛クリーム、化粧道具、そしてパックシートとおまけのアイスを私たちは購入した。お会計のとき、店員さんは支払いをしているのは兄貴だけどこの品物を使うのは全部私だって思ってるんだろうなと思った。
「こうして外でアイス食うのも、そろそろおしまいかな」
「いや、まだ暑いし」
帰り道、アイスを食べながら私たちは何だかんだと家に帰った。そして約束通り、兄貴に宿題の英語のプリントを渡したらすぐ返ってきた。全く、本当に頭がいいんだかバカなんだかわからない兄貴だな。
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