お布団から出よう!
原宿にロリータワンピースを買いに行った翌朝。
結局、昨夜はパパと下らないテレビを見ながらダラダラしちゃった。今日は宿題やらなきゃなぁ……。
それにしても朝のお布団がちょうどいい季節になってきた。全く日本の夏は暑すぎるんだよ、もっとちょうどいい季節の国に生まれたかったなあ。
私がタオルケットの中で至福の休日タイムを過ごしていると、やかましい奴がやってきた。
「
寝ている私を起こしにやってきたのは、ロリータ志望の天然ボケ兄貴だ。昨日ロリータワンピース買って、そこそこ満足したはずなんだけど。
全く日曜の朝からなんだって言うの……??
「昨日な、俺は思ったんだ」
あー、女装して楽しかったね。
私はもうちょっと寝たい。
じゃあね、おやすみ。
「いいから起きろ!」
お布団の海に潜る私を何としても起こしたいのか、兄貴はタオルケットを剥いでくる。
何て無礼なことを!?
「一体何なの!? ︎︎人の心とかないの!?」
「本気になった俺の朝は早い!」
「うるさい! ︎︎仮面ライダーでも見てろ!」
「仮面ライダーは朝の9時からになったんだ! ︎︎まだプリキュアもやってないぞ!」
くそ、ニチアサの時間変更がこんなところで世の中のお父さんお母さん以外に迷惑をかけるなんて!
「だから要件は何!? ︎︎時と場合に寄らなくても妹の布団を剥ぐのはセクハラだ!!」
とにかく要件を聞き出さないと、こいつは気が済まないんだろうな。
「手の毛って、髭剃りで剃っていいのか!?」
「はあ!?」
思ったよりくだらなかった!
寝かせろ!!
「髭剃りでも顔剃りでもカミソリなら何でも毛は剃れます、はいおやすみ」
「じゃあ足の毛は!?」
「足も手もアソコもなんでも毛はカミソリ! ︎︎……って、ちょっと待って」
私は慌てて起き上がる。
「もしかして、もう除毛しようとしてる?」
「何事も早いに越したことはないだろう?」
……はぁ。
「あのさぁ、今除毛しても本番までまだ日があるんだから、また生えてくるよ?」
「そんなのは分かってる、それでもスベスベになりたいんだ!」
「なんで?」
「昨日、ちょっと恥ずかしかったから……」
……ふーん。
そう言えば、試着室でもじもじしていたっけ。あれはすね毛の処理してなかったからかぁ。
「でもまだプリキュアも始まってないんでしょ、せめて仮面ライダーを見た後にまた……」
「今日ドラストに付き合ってくれたら、宿題ひとつやってやる。だからさっさと起きろ」
何!?
それはちょっと魅力的な提案だな……。
「でもドラスト開くまでまだ時間あるし、そんなに張り切らなくても」
「俺はもう仮面ライダーを見るような年齢じゃないんだぞ」
いや、この前まで見てたじゃん。
何なら、今のもたまに見てるじゃん。
「何にせよ、ドラストは逃げないから。せめてプリキュアが終わるまでは寝かせてよ」
「むぅ……必ずだぞ」
ようやくタオルケットを取り返して、私は再びお布団の海へ還っていく。生命はいつかみんなお布団へと戻るんだ……。
「……目ぇ覚めちゃったじゃん」
しばらくゴロゴロしたけど、お布団は諦めて私は起き上がるとリビングへ向かった。
「お、思ったより早く起きてきたな」
リビングで兄貴はパパとママと真剣にプリキュアを見ていた。
なんか変なところで律儀なんだよなあ、うちの家族は。
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