ロリータってロリコンなの!?

 紅茶を置いた私たちを前に、ジュンさんはカタログ片手に解説を始める。


「まずは、ロリータと言えば何を想像しますか?」


 う、いきなり難しい質問……。


「えっと……小さい女の子?」


 私のアホみたいな答えに乗せるように、バカ兄貴がしゃしゃり出てくる。


「ロリータと言えば、ナボコフの小説『ロリータ』に登場する少女ドロレスですよね」


 なんだよ、頭がいいからってスラスラ答えやがって。


「ドロレスの愛称がロリータで、主人公の中年男性が12歳の彼女を愛するというあらすじでロリータ・コンプレックスの語源なんでしたよね」


 え、そんなキモい話だったんだ。もっと可愛い話だと思うじゃん『ロリータ』ってタイトルからさぁ……ちょっと引くわ。オタクのおっさんの話とか誰が読むんだって話だよな、げー。


「お詳しいですね。そう言った性的魅力を引き出そうというのが、ロリータファッションの源流なんですよ」

「無垢な少女性、という奴ですかね」


 なんか難しい話が始まっちゃった……。


「10代前半の少女のコケットリーを表象したもの、というと難しいですけど要はカワイイってことですからあんまり難しく考えないでくださいね」


 ええ、十分難しいよう……。


「その証拠に、ロリータ・コンプレックスとロリータ・ファッションはただ少女性というところだけ共通点があるだけで、ファッションにはいかがわしさとかは一切ないんですよ」


 へえ、そうだったんだ……。


 なんとなく「ロリコン」からのイメージから服装としてのロリータもちょっとエッチなものかもって思ってたなあ。ランドセル背負った女の子にイタズラするオッサンが好むもの、みたいな。


朱美あけみ、お前実は少しエッチなものだとか思ってたんじゃないか?」

「そ、そんなこと思ってないもん!」


 何だよ!

 人の心を読むんじゃないこのクソ兄貴!!


 ほら、またジュンさん笑ってるし。


「確かに今の日本でロリコンと言えば普通はエッチなものを想像してしまいますものね。実際、日本では70年代あたりから今で言うロリコン文化が流行っていたこともあって、生身の女性ではなく空想の美少女を思い描くことを推進したカルチャーだったんですよ」


 うわキモ。やっぱりオタクじゃん。


「とはいえ、ロリータ・ファッションも方向性は違っても『自分の思い描く美少女』を表現するために進化してきたものなので根っこは一緒なんですよ」


 うーん、そういうものなのか?


「ジュンさんこそお詳しいですね」


 兄貴のほうはめっちゃ感心してる。こういうところ、ちょっとついていけないんだよなぁ。


「服飾史については少し……ナボコフの名前を出されてしまったので少し語ってしまいました。すみません」

「デザイナー志望とかですか?」

「そんな、私はただお洋服が好きなだけで……こういうところでバイトしてるくらいなので……」


 あれ、この2人なんか仲良くなってない?


「そろそろ本題に入りましょうか。相模さがみさんって面白い方ですね」

「はい、よく言われます!」


 あーそうだろうよ。

 年中開花宣言頭のこの兄貴だもんな。


「お話しながら考えたんですけど……相模さんは甘ロリで攻めた方が面白いと思うんです」


 あ、甘ロリ?

 何それ?

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