店員さんとご対面!
「いらっしゃいませー!」
勇気を出して入ったロリータ専門店の中から、いかにもロリータというロリータさん店員が出てきた。なんかメイクとかも全体的に真っ黒で怖い。
「何をお探しですか?」
「あああ、あの私じゃなくてこいつ、こいつです!」
私はさっさと固まってる兄貴の陰に隠れる。お前の服買いに来たんだからしゃきっとしろよ!
「お、お兄さんがロリータ着るんですか!?」
「あ、ああのそそそうですね……」
ほら頑張ってなんか喋れよ!
頑張れ、ここまで来たんだから頑張れよ!
頑張って異文化コミュニケーション取れよ!
英語得意なんだろ!?
「ちょっと、そのー、えっと、興味があって、ははは……あとはこいつに聞いてください」
ちょ、私を前に出すな!!
「彼女さんですか?」
ちがーう!!
「違います妹です!!」
ああもう、店員笑ってるし!
「ふふふふ……仲のいいご兄妹なんですね」
「あの、えーと、そういうことでお願いします!」
微笑む黒店員に、クソボケ兄貴がようやく前のめりで突っ込んでいく。
「えっと、僕は
ああもう全力の天然ボケ!
何で私まで巻き込んで自己紹介してんだよこのクソ兄貴!!
ほらー、お姉さんめっちゃ笑ってるじゃん!
「ご丁寧にどうも。私はここのスタッフのジュンです。そんなに緊張しなくて大丈夫ですから」
ジュンさんはぺこりとお辞儀をする。
あ、なんかいい人そうだな。
「それで、お兄さんが着るんですか?」
「えっと、そういうことになります! ︎︎こっちはオマケです!」
まだすんごい力の入った兄貴にジュンさんはクスクス笑ってる。
ちょっと待て、今何かさりげなく酷いこと言ってなかったか?
「最近は男の娘とか言って、男でもロリータに興味ある人出てきて私は嬉しいですね」
「そーなんですよね、僕もちょっと興味が湧いたというかなんというか」
けっ、数日前まで「女の服」程度の解像度だったくせに。
「ところで、相模さんは着たいロリータの傾向とか目指すものとかあります?」
「え、サイズの合うものならなんでも」
やっぱり根本的に「女の服」のまんまだった!
そういやこいつ、基本的に服は「適度に着られるならば何でもいい」だもんな……そもそも男の服ですら色とサイズしか見てねえ奴じゃん。どうしていきなりこんな高難易度の服に手を出そうとしてるんだろう。女の私だってロリータはなんか敷居が高いというか趣味の領域だと思ってるのに。
「それじゃあ、どうしてロリータに興味を?」
「学園祭で女装するんです」
大真面目に言うもんだから、ジュンさんめっちゃウケてる。もうツボってお腹押さえてるじゃん。ああ、このくらいだと何も思わない慣れた私が悲しい……!!
「それじゃあですね、まずはロリータの種類について勉強してみますか?」
「は、はい!」
あ、天然ボケがなんか元気になってる。
私もなんかロリロリしてる、くらいしかわかってないなぁ。
「あの……ロリータって種類あるんですか?」
「ありますよぉ、ちょっとこっちに来てください」
そう言うとジュンさんはお店の奥に私たちを招く。
ううん……大丈夫だと思うけど、大丈夫だよなあ?
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