第2章 ロリータとパンケーキ
いざ原宿!
前回までのあらすじ。
うちの兄貴が学園祭でロリータファッション着ることになった。それで土曜日に服を買いに行くことになった。以上。
そんで兄貴の待ちに待った土曜日。朝から電車を乗り継いでやってきたのは原宿、若者の街。
「ひー、人がいっぱいだ」
そんで、原宿よりもノリは巣鴨のほうが似合いそうな超絶マイペースクソボケ兄貴の隣で私はため息をついている。
「当たり前でしょ、原宿なんだから」
私は何だかそわそわしている兄貴に冷めたツッコミを入れる。
「原宿でも人が少ない時もあるかもしれないだろ!?」
「例えば?」
「台風のときとか」
「じゃあ台風のときに来ればいいじゃん。ちょうど来週あたり来るらしいよ」
「それだと店も電車もやってないだろ!」
あー、付き合いきれないや。
何で私はせっかくの土曜日に、この喋ると残念顔だけ男と原宿を歩いているのだろう?
どうせならもっとロマンチックな人と一緒にいたいのにな。
「あ、パンケーキ」
ふと見た看板のパンケーキが、なんだか美味しそうだった。
「なんだ、食うのか?」
「別に、ちょっとおいしそうだなって思っただけ」
すると兄貴はやたらとニンマリしてくる。
「よしよし、そういうことなら任せておけ。付き合ってもらってるんだから礼のひとつもしないといけないからな」
やったー!
パンケーキが食えるぞ!
どうせなら一番高い奴を頼むぞ!!
……はっ!
しまった、これじゃこっちがガキ扱いされてるじゃん!
今日は私がこいつの保護者だったのに!!
ああ、なんかめちゃくちゃドヤ顔してる!!
うう、クソボケ兄貴のくせに!!!
年だって1歳しか変わらないのに!!
先に生まれただけで偉そうなんだよ!!
「さあ行くぞ
「わかってるって!!」
なんだよ、これじゃあ私がただの食いしん坊みたいじゃない!
何やら得意げな兄貴に直ちに言い返さねば!!
「だいたい今日はアンタの服買いに来たんだからね!私がいないと入りにくいと評判のロリータファッション専門店に!!」
「なんとでも言え、お前さえいれば俺は堂々とロリータ専門店に入れるのだからな!」
「男の娘用を買いに行くのに?」
「……それはそれ、これはこれだ!!」
ん?
何でコイツ慌ててるんだ?
「いろいろと、その、人の目とか気になるだろう!!」
「んー……まあ、そうかもね」
まあでも、気持ちはわからないでもない。
やるからには本気でやる、とは言ってもロリータファッション専門店に男がひとりで行くのはやっぱりハードル高いと思う。
……そういう私もひとりだと入りにくいな。
付き添いだから気軽に入れるって感じもしている。
「ここだ、ここ!」
兄貴の指さす先にあったのは、もちろんロリータ服専門店。
店構えが、なんとなく寄り付きにくくある。
なんでだろう?
「よし、入るぞ」
「どうぞお先に」
「いやお前が先に入れよ」
しばらく店先に圧倒されていたけど、こんなことしていても何もならない。
「わかった、せーので入ろう」
「わかった、せーの、だからな!」
ああ、何だか私までボケてきたのかなあ!?
こうして私と兄貴は『せーの』でお店に入った。
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