仲直りをしよう!
「おい
それから数日後、しばらくふてくされていると兄貴から珍しく先に謝ってきた。
「いいよ、私の制服貸すから好きに着れば」
「違うんだ、そういうわけじゃなかったんだ」
ふんだ、別にもういいよ。何も教えてやんないよ。
「確かに俺も頼み方が雑だった。発注する側が雑にぶん投げたら下請けが苦労するのは当たり前だよな。だから俺は文句のないようにちゃんと勉強してきたんだ」
……おおう?
「とりあえず女装の歴史から学ぼうと思っていろいろ調べた。女装の起源は古来より様々な場所で行われて、特に女性に霊的な力が宿るとされて神事として行われることも多かったそうだな。日本ではあのヤマトタケルがクマソ討伐を行った際女装をして近づいたという話が」
あー、これは放置したらずっと喋ってる奴だ。こういう女の子を置いてけぼりにするところがクソボケなんだよなー。
「あのー、それで結論は?」
「……あー、つまり、なんだな。俺が何を着るかって話だな?せっかく女装をするなら、やはり戦略としては目立つ服装がよいな。明るい暖色の服装、長いスカート、そしてウィッグと組み合わせてこれぞ女子、と周囲が絶対認識する格好を探すとだな……」
するとバカ兄貴は可愛い女の子が表紙の雑誌を出してきた。
「ロリータ、なの?」
「そうだ!これなら完璧に誰がどう見ても女の女らしいところを表現できるぞ!!」
雑誌片手に何やら力説してきたが、とりあえず言いたいことはわかった。要はいろいろ考えた末にロリータファッションに挑戦したいということらしい。
「でもアンタ背が高いから着れるサイズあるの?」
「今は男の娘用と言ってデカいサイズの服もあるっちゃある!」
「でも着れないかもしれないし……」
「だから実際の店舗で試着をするんだろう!?」
「そんなところひとりで行けるの?」
すると兄貴はガシッと私の肩を掴む。
「こんなとき、頼りになるのが妹殿じゃないか!!」
そ、そうかもなー……。
本気でやれって言ったのは私だからなー。
「調べたら原宿あたりにはそういう店があったぞ。善は急げ、今週の土曜は空いてるか?」
「ええ、そんなすぐに行くの!?」
「やるからには本気になれと言ったのはお前だろうが!!」
そ、そうなんだけど。
そんなに急にギア変えてこないでよ!
「わ、わかったよ!今週の土曜付き合えばいいんでしょ!?」
「よし、約束したからな!」
何だか兄貴はルンルンしてる。
まあ、何事にも挑戦するというのは楽しいのかもしれない。
しかし兄貴とお出かけなんて、花の女子高生としてどうなんだろう?
私、寂しい奴なんかじゃないよね……?
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