魔界ゴミ焼却場で魔物を【焼却】し続けた地味おっさん、人間界に追放されて出来損ない聖女の従者となり魔物討伐の旅に出る。なぜか王国指定のS級魔物が毎日燃やしていたやつらなんだが? これ本当に激ヤバ魔物か?
第51話 聖女リズ視点、出来損ないと言われた聖女の力
第51話 聖女リズ視点、出来損ないと言われた聖女の力
「ば、馬鹿なっ! ドラゴンの中に入るじゃと……!」
「うわぁ~~バートスさま~~ズブズブいっちゃたぁ!」
『ひぃいい、バートスなにやってるのじゃあぁ……狂ってもうたのか』
アルバート先生にカルラ、エレナが度肝を抜かれて戦慄の声を漏らす。
まあたしかに、ドラゴンの中にズブズブ入っていくのを見て驚かない人はいないでしょう。
だけど。バートスは狂ってなどいません。
「バートスならきっと大丈夫です。考えあっての行動でしょう」
そう自分に言い聞かせるように、みんなに伝える。
今までもとんでもなことをしてきたじゃないですか。
だから大丈夫。
でも―――
やっぱり……
―――流石に心配です!
だって、いくらなんでもドラゴンの中に入るとか予想できませんよ……
だがその心配もすぐに消えることになる。
ミスリルドラゴンの体から炎が漏れ始めたからです。
「こ、これは……バートス殿は体内から炎を出しているのか……」
アルバート先生の言う通り、バートスはドラゴンの体内で【焼却】を使用しているようです。
「なんという炎じゃ……ドーピングで無敵になった最硬度のミスリルが溶けていく……」
「すごいこれがバートスの力ですか……はじめてみました」
アルバート先生、ファレーヌさまをはじめ王国軍のみなさんも眼前で起こっている事象に釘付けとなっている。私も同じくですが。
その硬いミスリルで覆われた皮膚が、ボコボコと沸騰したように蒸気を発しながらドロドロに溶けていく。
湖に銀色の液体が広がっていき、ドラゴンはその姿を完全に消失したのであった。
私はじっとあたりに目を凝らす。
バートス……っ! どこですか。
すると、ひょっこり姿を現すバートス。
良かった……とくにケガをしている様子もないですね。
あ! でも―――
ケガはしてないけど―――
「―――バートス! 燃えてます!」
バートスを中心に真っ赤な炎が吹き上がる。
「バートス殿! もうじゅぶんだ! くっ……まだ火力が上がっていく……なんじゃこれは」
「アルバート先生……あれはバートスの意志で出している炎ではありません」
「どういことじゃリズ? しかしドラゴンはすでに討伐しているのだぞ」
「バートスは今、炎の制御ができなくなってるんです」
久しぶりの暴走です。
「行きます……アルバート先生防御魔法を展開してみなさんを守ってください」
「い、行くだと!? あの炎がみえんのか? 無茶苦茶だ、もはや近づくことすらできん!」
そんなのわかってます。
「リズ~~あたしも行きたいけど……」
「カルラ、大丈夫です。すぐにバートスと戻って来ますよ」
「うん……わかった」
そう、これを止められのは私だけ。
「エレナ、力を貸してください」
『ふえぇえ……あそこに行くの? ねぇ行っちゃうのぉ?』
「お願いですから」
『わかったのじゃ……われもバートスのことは好きじゃからな!』
意を決したように輝きを放つ聖杖。
エレナの力で強化された魔力を練って、氷魔法の膜を張る。
「―――さあ、バートス。行きますよ!」
彼のいる湖畔にまで進むと、強烈な熱が一帯を支配していて息が苦しい。
湖面がバートスの炎でグツグツと沸騰し始めています。
―――いました!
「バートス! ………んっ!」
もの凄い熱量です。
レッドドラゴンの時よりも激しい。
「リズか!?」
「はい、私ですよ」
「来てくれたんだな」
「もちろんです」
短い言葉のやり取り。
もう多くの言葉は必要ないです。
やることは決まってますから。
ということで―――「えいっ!」
ピョンとバートスに飛びつきました。
「うお!? リズ??」
そこは驚かないでくださいよ。いつもこうしているでしょ。
これが一番いいんです。
「バートス、いちいち狼狽えないでください! 今、集中してるんですから!」
「お、おう……」
少し気の抜けた返事が返ってきたが、そんなことを気にしている暇はない。
エレナの力で強化された氷の膜がすぐに蒸発していきます。
蒸発するより早く氷魔法をまとわないと一瞬で灰になってしまう。
『あっちぃいいい~~リズあついぃいいのじゃ!』
くっ……火力はむしろ上がっている!?
これじゃ抱き着いてる意味がないです。
「エレナ! もうちょっと踏ん張りなさい!」
『ひぃいいん……が、頑張るのじゃ~~』
このままだと、いずれ魔力が枯渇して終わりです。
さらに氷魔法を追加で発動させないと。
でも単発で使用しても効果はほとんど見込めない。
長期的に持続力のある魔法じゃないと……
考えて、なにかあるはず――――――考えるのよ、リズロッテ。
私の額から汗がしたたり落ちる。
あった! ひとつだけ可能性のある魔法が!
でもこれは本来の聖女が使用できるもの……
「なんかわからんけど、やってみろリズ」
「え? バートス……?」
何かを察したかのように、私の目を見て頷くバートス。
「でも……」
本当にこれでいいのかわからない。
無駄に魔力を消費するだけかもしれない。もっといい方法があるかもしれない。
「やってみないとわからんだろう? ダメだったら俺から離れればいい」
バートスの言葉に拳をぎゅっと握る私。
「やってみますバートス。でも……どんな結果になろうがあなたからは離れませんよ」
「そうか……なら成功させるしかないな。よろしく頼むよ」
もちろんですとも。
「エレナ! 連続で魔法を使用します! サポートしてください!」
『わかったのじゃ~~うぅ~~ん』
エレナの聖杖から力が流れてきます。
彼女も懸命に頑張ってくれている。
だから、勝負をかけるなら今しかない!
「―――
七本の氷の槍を私とバートスの周囲に均等に突き刺す。
そして―――
全ての氷槍を繋ぐように魔力を均等に流し込み―――
「聖女の名の元に顕現せよ!
――――――
周囲の氷槍から青い結界が伸びていき、私たちを囲んでいく。
―――!?
できた!
できました結界!
「おお、これなんだ? 凄いなリズ!」
「やりましたバートス! 氷の結界です! これでバートスの炎を囲いましたよ!」
さあ~~あとは私の魔力が尽きるまでに、バートスを消火する!
やります! 絶対に!!
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